イラストリアス (空母・2代)

イギリス海軍軽空母イラストリアス(R06): 活躍と変遷の記録

イラストリアス(HMS Illustrious, R06)は、イギリス海軍が運用したインヴィンシブル級軽空母の2番艦です。その艦歴は、冷戦終結後の世界情勢におけるイギリス海軍の役割を象徴するものです。本稿では、イラストリアスの建造から退役までを詳細に辿り、その活動と近代化改修の軌跡を明らかにします。

建造とフォークランド紛争の影響

1976年、スワン・ハンター社で起工されたイラストリアスは、1978年に進水しました。建造期間中にはフォークランド紛争が勃発し、急ピッチでの建造が求められました。紛争終結後も、アルゼンチン軍の潜在的な脅威への備えとして、フォークランド諸島近海での警備に投入される予定でした。しかし、艦の性能を十分に発揮するには時期尚早だったため、防空網の整備後にイギリスへ帰還し、1983年に正式に就役しました。

近代化改修と多様な任務

就役後、イラストリアスはシーハリアー戦闘機の運用効率向上のため、スキージャンプ甲板の角度変更（7度から12度へ）などの近代化改修を受けました。シーダート艦対空ミサイルの撤去による飛行甲板の拡大や、CIWSの換装なども行われ、ハリアーGR.7の搭載数増加と運用能力の向上を図りました。

1990年代には、ボスニア紛争における飛行禁止区域の監視活動に従事。インヴィンシブル級の他の艦艇とローテーションを組み、国際社会の平和維持活動に貢献しました。2000年にはシエラレオネに派遣され、治安回復支援活動にも参加しています。

2001年のアメリカ同時多発テロ事件発生時には、オマーン沖で演習中でした。僚艦がイギリスへ帰還する中、イラストリアスはイギリス海兵隊を乗艦したままアフガニスタン侵攻への備えを続けました。2002年初頭にヘリコプター母艦オーシャンが増派されるまで、その任務は継続されました。

2003年には、軽空母とヘリ空母の任務を効率的に切り替えるための近代化改修を実施。スキージャンプ甲板の改修も含まれ、2004年に完了しました。

旗艦としての役割と退役

2005年、インヴィンシブルの退役により、イラストリアスはイギリス海軍の旗艦となりました。2006年のイスラエルによるレバノン侵攻時には、ベイルートからのイギリス人避難民の脱出支援を行いました。

2010年にイギリス軍がハリアーGR7／GR9の運用を終了したことに伴い、イラストリアスはヘリ空母として運用されました。そして2014年8月28日、ポーツマス港で退役。その任務はオーシャンと新型のクイーン・エリザベス級航空母艦に引き継がれました。

総括

イラストリアスの艦歴は、冷戦後の世界情勢の変化とイギリス海軍の適応能力を反映したものです。フォークランド紛争、ボスニア紛争、シエラレオネ、アフガニスタンなど、様々な紛争や危機に対応してきたイラストリアスは、イギリス海軍の歴史において重要な役割を果たしました。その功績は、退役後も長く語り継がれるでしょう。

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