クイーン・エリザベス級航空母艦

クイーン・エリザベス級航空母艦

クイーン・エリザベス級航空母艦（Queen Elizabeth-class aircraft carrier）は、イギリス海軍に所属する最新の航空母艦グレードであり、STOVL（短距離離陸・垂直着陸方式）を採用しています。満載排水量は6万トンを超え、イギリス海軍の艦艇としては最大の規模を誇ります。このクラスは、計画名をCVF（Carrier Vessel Future）といい、建造単価は約31億ポンドに達しています。

来歴

1960年代に老朽化した空母の代替を求めて、CVA-01級の計画が立てられましたが、予算の問題によりキャンセルされ、イギリス海軍は代わりにインヴィンシブル級航空母艦を導入しました。このインヴィンシブル級は1980年代と1990年代のフォークランド紛争や湾岸戦争などで活躍しましたが、2010年代にはその艦齢が30年を迎え、退役することが見込まれていました。

そのため、次世代の空母計画が必要とされ、1980年代半ばから新たな設計が模索されました。1998年に正式に進められたこの計画では、さまざまな設計案が提案され、最終的にBAEシステムズが主契約者として選定されました。その後、2002年にF-35B戦闘機が搭載機に選ばれ、STOVL方式に決まります。

フランスとの協力と混乱

フランス海軍が新しい空母の必要性を感じ、英仏で共同開発の覚書が結ばれましたが、意見の不一致や政治的な要因から、パートナーシップは頓挫しました。イギリス側では出費がかさみ、計画修正が行われ、艦上機も変更が考慮されましたが、最終的にはF-35Bの搭載が進められ、2番艦も同様の仕様で建造されることが決定しました。

設計

クイーン・エリザベス級の設計は、航空母艦としての高度な機能と効率性を考慮したものです。アイランド（艦橋の構造物）は、作戦用と航空管制用の二つに分かれており、抗堪性を向上させる工夫が施されています。また、船体は大型化し、航行時の安定性を確保しています。居住空間や医療設備も充実しており、乗組員の快適性が考慮されています。

船体の建造は分業方式が採用され、各地の造船所で建造され、スコットランドのロサイスで最終的に組み立てられました。このブロック工法は、効率的な建造を促進しました。

機能と運用能力

航空発着用の飛行甲板は広大で、STOVL機とヘリコプターの運用が可能です。着艦エリアは特殊な塗膜で強化されており、運用環境に応じた柔軟性を持っています。最新鋭のF-35B戦闘機が主役とされ、将来的には無人機や他のタイプの航空機も運用できるよう改修計画が進められています。

防御と武器システム

各種レーダーによる空域の監視能力があり、近接防御用兵器にも配備されていますが、対潜能力は持たない構造です。また、安全な運用を確保するための多くの技術が搭載されています。

運用の実績

クイーン・エリザベス級は、2021年に多国籍合同の空母打撃群を編成し、広範な地域への展開を行った事例もあります。このように、イギリス海軍にとってこの級は現代における重要な軍事戦力を形成しています。また、この新たなクラスは、国際的な安全保障環境においても重要な役割を果たすことが期待されています。

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