イランの政治

イラン・イスラム共和国の政治体制

イランの政治は、1979年のイスラム革命を経て成立したイラン・イスラム共和国憲法によって規定されています。この憲法は、イスラームの教義を政治、経済、社会の根幹に据えるイスラーム共和制を定めています。

統治原理と憲法

イラン・イスラム共和国の政体は、イスラーム、具体的にはシーア派十二イマーム派のジャアファル法学派を国教としています。憲法は、政治・経済・社会のあり方を定めるとともに、キリスト教、ユダヤ教、ゾロアスター教の市民には一定の権利を認めていますが、バハイ教徒や無神論者は国内での生活が認められていません。

政治情勢

革命後、イランはイラン・イラク戦争や経済的混乱などの苦難を経験しました。初期の体制は、アメリカ合衆国との対立を深め、アメリカ大使館人質事件などを引き起こしました。現在もアメリカとの国交は断絶したままです。

国内では、革命に参加した勢力間の権力闘争が起こり、最終的にはホメイニー師の弟子である法学者たちが権力を掌握しました。その後、イスラーム共和党が解散し、一時的に無政党状態となりましたが、後に建設奉仕者団などの政党が活動を開始しました。しかし、市民の間には革命防衛隊や秘密警察などの存在が浸透し、反政府的な動きは厳しく抑制されています。近年では、大規模なデモが発生し、政府への批判が高まっています。

最高指導者

最高指導者は、イラン・イスラム共和国の最高権力者であり、国家の全般的政策・方針の決定と監督に責任を負います。任期は終身で、イラン軍および革命防衛隊の最高司令官を務め、諜報機関および治安機関を統括します。宣戦布告の権限も最高指導者のみに与えられています。最高指導者は、専門家会議によって選出・罷免されますが、これまで罷免された例はありません。

行政府

大統領は、最高指導者に次ぐ高位の官職であり、国民の直接選挙によって選出されます。任期は4年で、3選は禁止されています。ただし、大統領候補は監督者評議会の審査と承認が必要であり、イスラーム共和制の政体そのものに批判的な候補は立候補が認められません。大統領は、行政府の長として政策を執行し、閣僚を指名し、議会に法案を提出します。ただし、軍の統括権は大統領にはありません。

立法府

イランの立法府は一院制で、議会（マジュレス）と呼ばれます。議員は国民の直接選挙によって選出され、任期は4年です。議会は、立法、条約の批准、国家予算の認可などを行います。しかし、議会への立候補には監督者評議会の審査が必要であり、議会による立法も監督者評議会の承認が必要です。

監督者評議会

監督者評議会は、12人の法学者から構成され、議会可決法案がシャリーア（イスラーム法）に適合するかを審議する権限を持ちます。議会に対する拒否権を持つ機関と言えます。また、選挙候補者の立候補資格審査も行います。

司法府

最高司法権長は最高指導者によって任命され、最高裁判所長官および検事総長を任免します。一般法廷が通常の民事・刑事訴訟を扱い、国家安全保障に関わる問題は革命法廷が扱います。イスラーム法学者特別法廷は、法学者による犯罪を扱いますが、通常の司法体制からは独立しています。

専門家会議

専門家会議は、国民の選挙によって選出される86人のイスラーム知識人から構成されます。任期は8年で、最高指導者を選出・罷免する権限を持ちます。

選挙制度

選挙は、監督者評議会の監督下で行われ、立候補者の審査も監督者評議会が行います。この制度は、改革派からは閉じた権力循環であると批判されています。監督者評議会の構成員は、最高指導者によって指名されるイスラーム法学者と、最高司法権長の指名に基づいて議会が選出する一般法学者からなります。

国際機関への参加

イランは、CP、ECO、UNなどの多くの国際機関に参加しています。

イランの政治体制は、複雑な構造を持ち、様々な要素が絡み合っています。イスラームの教義と共和制の原則がどのように組み合わされているか、権力構造がどのように機能しているかを理解することは、イランの政治を理解する上で不可欠です。

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