十二イマーム派

十二イマーム派：シーア派における最大勢力とその信仰

イスラム教シーア派の中でもっとも多くの信者を擁する十二イマーム派は、イラン、イラク、アゼルバイジャン、レバノンなど、世界各地に広がる重要な宗派です。イランでは国教として深く社会に根付いており、ペルシア人やアゼルバイジャン人のアイデンティティと密接に結びついています。日本の報道では、しばしば「シーア派」といえば十二イマーム派を指すことが多いです。

この宗派の名称は、歴史上12人のイマーム（宗教指導者）がムハンマドの子孫として継承されたことに由来します。初代イマームはムハンマドのいとこであり、婿であるアリーであり、その後も血縁関係を重視してイマームの地位が受け継がれていきました。しかし、その系譜には様々な分派を生む出来事もありました。例えば、第五代イマームの解釈を巡ってザイド派が、第七代イマームをめぐってイスマーイール派が派生しました。

十二イマーム派の特徴として、12代目のイマームが人々の前から姿を消したという「隠れ（ガイバ）」の信仰があります。これは、イマームが隠れた、もしくは別の次元へと移ったと解釈され、最後の審判の日までイマームの再臨を待つという信仰につながっています。現在でもこの「隠れ」の状態は継続していると信じられており、十二イマーム派の信仰の中核をなす重要な概念となっています。

十二イマーム派は、ジャアファル法学派という法学体系を奉じています。イマーム不在の時代においては、イスラム法学者たちがイマームの代理として信者を導くとされています。20世紀のイラン革命では、ホメイニーが提唱した「法学者の統治論」が大きな役割を果たしました。この思想は、イマーム不在の時代における法学者の権威づけを正当化するものであり、革命の精神的支柱として機能しました。

十二イマーム派は、その歴史の中で様々な分派を生み出してきました。18世紀にはシャイフ・アフマド・アフサーイーが説いたシャイヒー派が生まれ、19世紀にはそこからバーブ教やバハイ教が派生しました。これらの教派は、十二イマーム派の信仰を基盤としながらも、独自の教義や解釈を持ち、異なる発展を遂げています。

十二イマーム派の信者たちは、12人のイマームを敬い、その教えに従って生活を送っています。彼らの信仰生活は、礼拝、断食、巡礼といったイスラム教の基本的な実践に加え、イマームへの信仰と、再臨への期待という独特の要素を含んでいます。イラン革命以降、イラン政府は十二イマーム派の教義に基づいた政策を推進し、シーア派としてのアイデンティティを強く打ち出しています。

十二イマーム派の信仰は、イランだけでなく、世界中のシーア派共同体において重要な役割を果たしています。その歴史、教義、そして現代社会における影響を理解することは、現代世界の政治や文化を理解する上で不可欠な要素と言えるでしょう。様々な分派が生まれた背景、イマームの系譜、そして「隠れ」の信仰といった要素を理解することで、十二イマーム派の複雑さと奥深さを知ることができます。

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