イラー

イラー：インド神話の神秘的存在

イラー（サンスクリット: इला Ilā）は、古代インドの神話に登場する女神であり、様々な側面を持つ神秘的な存在です。彼女は主に『リグ・ヴェーダ』や『マハーバーラタ』などの文献に登場し、牛乳やバターの供物と密接に関連しています。イラーの名前は、栄養の象徴ともされ、その起源は豊かな乳製品に由来します。早くから女神として描かれるようになり、神々の中で特別な地位を占めています。

起源と神格化

イラーもしくはイダーという名前は、サンスクリット語で「栄養」を意味し、初めは牝牛から得られる牛乳やバターを指していました。しかし、『リグ・ヴェーダ』では、彼女はすでに女神としての特性を持つことが描かれています。特に興味深い表現としては、「バターの手を持つ」や「バターの足を持つ」といった記述が見られ、彼女の神格化が進んでいたことが伺えます。また、『リグ・ヴェーダ』の中では、勇敢な神アグニがイラーの息子として紹介されています。

系譜と生まれた背景

『マハーバーラタ』の中では、イラーの系譜が記されています。プラジャーパティという創造の神から、彼女はエニティを通じて生まれたとされ、彼女の家系には多くの重要な神々が含まれています。特に月の系譜において、イラーはプルーラヴァスの親としても知られていますが、時には彼女自身がプルーラヴァスを生む母でもあるとされたり、逆に母親である神ブダとの子供であるとも解釈されています。

イラーの物語には、彼女がミトラ＝ヴァルナの娘として描かれることもあり、彼女の存在は複雑さを増していきます。『シャタパタ・ブラーフマナ』では、マヌが神々に供物を捧げた結果、唯一の人間としての存在を求めた結果イーダが生まれ、人類がここに起源するという神話にもつながっています。

両性具有と変身

イラーは非常にユニークな存在であり、両性を持つ神として知られています。『マハーバーラタ』においては、彼女はプルーラヴァスの父でもあり母でもあると言及されており、その変則的な役割がいかに多面的であるかを際立たせています。一方、『ラーマーヤナ』では、呪いによって性別が変わる王の物語が語られ、月ごとに男女が入れ替わるという伝説に富んでいます。これによりイラーは、しばしば男性としても、時には女性としても描かれることとなりました。

『バーガヴァタ・プラーナ』では、マヌが望んで生まれた女の子イラーが、後に男性であるスデュムナに変わることになりますが、ユニークな運命はシヴァの呪いによって再び女性に戻ることになります。このようにイラーの性別にまつわる物語には、様々な解釈とバリエーションが含まれています。

まとめ

イラーはインド神話において単なる女神を超え、その存在は多様性を持った神秘的な象徴とされます。彼女は栄養を与え、神々の世界において重要な役割を果たす存在であり、古代の人々にとっては生と死に通じる象徴でもありました。イラーの物語は、古代インドの文化と思索を深く理解するうえで非常に興味深いものとなっています。

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