イリナ・ユスポヴァ

イリナ・フェリクソヴナ・ユスポヴァ：激動の時代を生きた名門の女性

イリナ・フェリクソヴナ・ユスポヴァ（1915年3月21日 - 1983年8月30日）は、ロシア帝国屈指の名門、ユスポフ家のフェリックス・ユスポフ公爵と、ロシア皇帝アレクサンドル3世の孫娘イリナ・アレクサンドロヴナ公女の間に生まれた一人娘です。彼女の生涯は、ロシア革命という激動の時代と深く結びついていました。

生い立ちと亡命

イリナは、サンクトペテルブルクのモイカ宮殿で、母と同じ名前を与えられて誕生しました。父フェリックスは莫大な財産を有するユスポフ家の当主であり、母イリナ・アレクサンドロヴナは、皇帝ニコライ2世の妹クセニア・アレクサンドロヴナ大公女の娘でした。しかし、二月革命後、イリナとその家族はクリミアに監禁されるという苦難を経験します。1919年、彼らはイギリス海軍の巡洋艦「マールバラ」によって救出され、フランスへと亡命することになりました。

フランスでの生活は、イリナにとって複雑なものでした。母とは疎遠で、乳母に育てられましたが、父フェリックスを深く敬愛して育ちました。

結婚と晩年

1938年、イリナはニコライ・ドミトリエヴィチ・シェレメーテフ伯爵と結婚し、一女クセニア・シェレメーテヴァをもうけました。結婚後、彼女は夫の姓を名乗り、ギリシャに移り住みます。そこで出会ったオランダ大使夫人との交流の中で、彼女は自身の出自、つまり父がラスプーチン殺害に関与した人物であり、相手がラスプーチンの孫娘であることを打ち明けました。この事実は、彼女の人生にどのような影響を与えたのでしょうか。

イリナは1983年、68歳でこの世を去り、サント＝ジュヌヴィエーヴ＝デ＝ボワのロシア人墓地に埋葬されました。

子孫たちの物語

イリナの娘クセニアは、ギリシャ人男性イリアス・スフィリスと結婚し、タチアナ・スフィリスをもうけました。興味深いことに、1992年、ニコライ2世の遺骨確認作業が行われた際、クセニアは献血を快諾しました。これは、他の血縁者が協力を拒否する中で、特筆すべき行動でした。この献血は、歴史の真相を解明する上で重要な役割を果たしました。

タチアナは二度の結婚を経て、マリリアとヤスミン・クセニアという二人の娘をもうけています。こうして、ユスポフ家の血筋は現代にも受け継がれています。

イリナ・フェリクソヴナ・ユスポヴァの生涯は、ロシア帝国の終焉と亡命、そして家族の絆という、複雑な要素が絡み合ったものでした。彼女の物語は、激動の時代を生きた人々の記憶として、語り継がれていくことでしょう。

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