イリ・カザフ自治州

イリ・カザフ自治州：新疆ウイグル自治区北部の多民族自治州

イリ・カザフ自治州は、中華人民共和国新疆ウイグル自治区の北部、天山山脈とボロホロ山脈に挟まれたイリ盆地に位置する副省級の自治州です。州都はグルジャ市（伊寧市）であり、中国においては非常に珍しい、タルバガタイ地区とアルタイ地区という2つの地区を管轄下に置く、独自の行政区分を持っています。

民族構成と地理

自治州の民族構成は多様性に富み、漢族が最も多くを占める一方で、カザフ族が25.5%、ウイグル族が15.9%と、それぞれ独自の文化と伝統を保持しています。この多様な民族構成は、イリ・カザフ自治州の歴史と文化の豊かさを象徴しています。地理的には、イリ川の上流域に広がるイリ盆地が中心を占め、その周辺には広大な草原や山岳地帯が広がっています。この多様な地形は、農業や牧畜など、多様な産業を支えています。

歴史

イリ地方の歴史は古く、唐代には突厥に属したカルルク部が居住していました。その後、カラハン王朝を経て、西遼の耶律大石が支配下に置きました。モンゴル帝国の支配下に入った後も、チャガタイ・ハン国の一部として存在し続けました。17世紀後半には、ジュンガル部がイリ地方を支配の中心とし、清朝との間で長年にわたる紛争が続きました。清朝がジュンガル部を征服した後、イリ将軍が駐在する恵遠城（現在の霍城県恵遠鎮）は、新疆の政治・軍事の中心地として重要な役割を果たしました。1954年、中華人民共和国成立後にイリ・カザフ自治州が設立されました。

行政区域

イリ・カザフ自治州は、3つの県級市（グルジャ市、コルガス市、クイトゥン市）、7つの県、そして1つの自治県から構成されています。さらに、前述の通りタルバガタイ地区とアルタイ地区という2つの地区を管轄しており、これらの地域には多くの市町村が含まれています。タルバガタイ地区は98,824平方キロメートル、人口91万人、アルタイ地区は118,015平方キロメートル、人口59万人を擁する広大な地域です。各県や市の面積や人口は様々ですが、州全体としては非常に広大な面積を有しています。

年表と行政変遷

イリ・カザフ自治州の行政区分は、中華人民共和国成立後も幾度となく変更されてきました。1949年のイリ専区設立から現在に至るまで、県や市の統合・分割、名称変更、地区の編入・分離などが繰り返されてきました。この変遷は、政治情勢の変化や人口移動、経済発展など、様々な要因が複雑に絡み合って生じたものです。年表に示されるように、この過程は複雑で、詳細な理解には相当な時間と労力を要します。 この複雑な行政変遷の歴史を理解することで、現在のイリ・カザフ自治州の姿が見えてきます。

まとめ

イリ・カザフ自治州は、中国の西北部に位置する、多民族が共存する広大な自治州です。複雑な歴史と多様な民族構成、そして広大な面積と豊かな自然環境が特徴です。その歴史と地理、行政区分、そして民族構成の複雑さを理解することは、この地域をより深く理解するために不可欠です。今後の発展においても、これらの要素が重要な役割を果たすでしょう。

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