カルルク

カルルク：中央アジアを舞台に活躍したテュルク系遊牧民

7世紀から12世紀にかけて、中央アジアのジュンガル盆地やイリ地方を主な拠点としたテュルク系遊牧民、カルルク。彼らは東西両方の史料にその存在を記録されており、その歴史は複雑で興味深いものです。中国史書では「歌邏禄」「葛邏禄」「葛禄」、ペルシャ語では「Khallokh」、アラビア語では「Qarluq」など、様々な名称で呼ばれていました。

カルルクの名称と部族構成

カルルクの名称は、史料によって多様な表記が見られます。これは、多様な言語圏からの記述が混在しているためと考えられます。主要な史料としては、『旧唐書』『新唐書』『オルホン碑文』『集史』『世界征服者の歴史』『テュルクの系譜』などがあり、それぞれ異なる表記を使用しています。

『新唐書』によると、カルルクは謀落（Bulāq）、熾俟（Čigil）、踏実力部の3つの部族から構成され、それぞれ陰山都督府、大漠都督府／金附州、玄池都督府が置かれていました。この3部族を合わせたものを「三姓歌邏禄（ウチュ・カルルク）」と呼んだとされます。

カルルクの歴史：西突厥支配からモンゴル帝国へ

カルルクは当初、西突厥の支配下にありました。しかし、西突厥の支配が弱まると、多くのカルルクは西突厥から離反。唐との関係を深めていきます。唐との間では、協力と対立を繰り返しながら、勢力拡大を図りました。

特に注目すべき出来事として、751年のタラス河畔の戦いが挙げられます。この戦いでは、カルルクがアッバース朝軍に寝返ったことが唐軍の敗北に繋がったとされています。

その後、カルルクは回紇（ウイグル）と勢力を競い合いながら、イリ地方などの中央アジア各地に勢力を拡大。独自の勢力圏を築き上げます。しかし、後に台頭してきた西遼の支配下に組み込まれることになります。

12世紀になると、モンゴル帝国の興隆が始まります。チンギス・カンは、カルルクの首長アルスラーン・カンからの朝貢を受け、外交関係を結んだことが知られています。

カルルクの居住地と文化

カルルクの居住地は、時代によって変遷しました。初期には、ジュンガル盆地北西部を中心に居住していたとされます。その後、一部はモンゴル高原に移住させられたものの、アルタイ山脈西麓に残った集団も存在しました。766年以降は、イリ地方を中心に、チュイ川やタラス川流域、フェルガナ、カシュガルなどに勢力を拡大したと推測されています。

カルルクの文化については、遊牧民としての伝統を受け継ぎつつ、周辺勢力との交流を通じて独自の文化を形成していったと考えられます。イスラム教の伝播もカルルク社会に影響を与え、後のカラハン朝の成立にも繋がっていきました。

主要文献からの記述

カルルクに関する情報は、多様な文献から得られています。中国の『旧唐書』『新唐書』は、唐との関係におけるカルルクの動向について貴重な情報を提供しています。また、『集史』、『世界征服者の歴史』などのペルシア語やアラビア語の史料は、異なる視点からの情報を提供し、カルルク研究に貢献しています。これらの史料を総合的に分析することで、より詳細なカルルク像を描くことが可能になります。

まとめ

カルルクは、中央アジアの歴史において重要な役割を果たしたテュルク系遊牧民でした。西突厥支配からの離反、回紇との同盟と対立、独自の勢力形成、西遼支配下への編入、そしてモンゴル帝国との関わりなど、その歴史は複雑で多様です。様々な史料からの情報を読み解くことで、彼らが築き上げた文化や、周辺勢力との関係性をより深く理解することができるでしょう。今後の研究により、カルルクに関するさらなる知見が得られることが期待されます。

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