イルデブランド・ダルカンジェロ

イルデブランド・ダルカンジェロ（Ildebrando D'Arcangelo, 1969年 12月14日 - ）は、イタリア出身の声楽家であり、主にバリトンおよびバスの音域で活躍する国際的なオペラ歌手です。

略歴

ダルカンジェロは1969年、イタリアのペスカーラで生まれました。音楽への情熱を抱き、1985年に地元のLuisa D'Annuzio音楽学校でマリア・ヴィットーリア・ロマーノに師事し、声楽の基礎を築きます。その後、ボローニャに移り、パリーデ・ヴェントゥーリの下でさらに研鑽を積みました。

1989年、トレヴィーゾで開催されたトーティ・ダルモンテ国際コンクールで、モーツァルトのオペラ『ドン・ジョヴァンニ』のマゼット役を歌い優勝。1991年にも同コンクールで、モーツァルトの『コシ・ファン・トゥッテ』ドン・アルフォンソ役で再び優勝を果たし、その才能を広く知らしめました。

これらの受賞を機に、ダルカンジェロは世界的な舞台へと羽ばたきます。ウィーン国立歌劇場、ロンドンのロイヤル・オペラ・ハウス、パリのオペラ・バスティーユ、ニューヨークのメトロポリタン歌劇場、ミラノ・スカラ座など、名だたる歌劇場に次々と出演。ザルツブルク音楽祭などの著名な音楽祭にも参加し、国際的な評価を確立しました。

リッカルド・ムーティ、クラウディオ・アバド、リッカルド・シャイー、ゲオルク・ショルティ、ダニエレ・ガッティ、ベルナルト・ハイティンク、チョン・ミョンフン、ヴァレリー・ゲルギエフ、ジョン・エリオット・ガーディナー、小澤征爾、クリストファー・ホグウッド、ニコラウス・アーノンクール、アントニオ・パッパーノといった、世界を代表する指揮者たちと共演し、数々の名演を繰り広げています。

2009年4月にはヘンデルのアリア集、2011年4月にはモーツァルトのアリア集をドイツ・グラモフォンからリリースし、ソロ歌手としての才能も高く評価されています。

ウィーン国立歌劇場での長年にわたる活躍と貢献が認められ、2014年12月には、オーストリア政府から名誉ある「オーストリア宮廷歌手」の称号を授与されました。

モーツァルトのオペラ『ドン・ジョヴァンニ』タイトルロールは、ダルカンジェロの当たり役として知られています。2014年夏のザルツブルク音楽祭での公演は特に高く評価され、DVDも発売されました。2012年にドイツ・グラモフォンから発売されたCDでも同役を歌唱、2015年9月の英国ロイヤルオペラハウス日本公演でも同役で観客を魅了し、大成功を収めました。

2016年11月のウィーンオペラ座来日公演では、ムーティ指揮による『フィガロの結婚』でアルマヴィーヴァ伯爵役を演じ、聴衆を魅了しました。同役は2015年11月にベルリン州立歌劇場でも歌い、テレビ放送を通じて幅広い層から高評価を得てDVD化もされています。

2016年12月には、NHK交響楽団創立90周年記念コンサートにおいて、ビゼー作曲『カルメン』のコンサート形式でエスカミーリョ（闘牛士）役を歌い、観客を熱狂させました。このコンサートの模様は、2017年3月にテレビ放送されています。

2019年9月には、英国ロイヤルオペラハウスの日本公演で、グノー作曲『ファウスト』のメフィストフェレス役を演じる予定です。同役は、ベルリンとリエージュでの新演出でも歌い、絶賛を博しています。

レパートリー

ダルカンジェロは幅広いレパートリーを持ち、数々のオペラやコンサートに出演しています。

DVD

タンクレーディ（シュヴェツィンゲン音楽祭）
愛の妙薬（ウィーン国立歌劇場）
ドン・ジョヴァンニ（アン・デア・ウィーン劇場）
ドン・ジョヴァンニ（ザルツブルク音楽祭）
フィガロの結婚（ザルツブルク音楽祭）
カルメン（ロイヤル・オペラ・ハウス）
清教徒（ボローニャ歌劇場）
ヴェルディ・レクイエム（ロサンゼルス・フィルハーモニック）
愛の妙薬（バーデン＝バーデン祝祭劇場）
ドン・ジョヴァンニ（マチェラータ音楽祭）
ドン・ジョヴァンニ（ザルツブルク音楽祭）
フィガロの結婚（ベルリン国立歌劇場）
* アッティラ（ボローニャ歌劇場）

これらのDVDは、ダルカンジェロの卓越した歌唱力と演技力を堪能できる貴重な記録です。

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