イルフォード (写真)

イルフォード：写真フィルムと印画紙の老舗

イルフォードは、イギリスを代表する写真用品メーカーであり、そのブランド名としても広く知られています。1879年にアルフレッド・ハーマンが創業した写真乾板製造会社をルーツとし、長年にわたり銀塩写真の世界で重要な役割を果たしてきました。

歴史と変遷

1879年の創業以来、社名はブリタニア・ワークス、イルフォード・リミテッドと変遷し、1902年に現在の「イルフォード」となりました。2004年には経営破綻を経験しましたが、翌2005年にハーマン・テクノロジーとして再編され、白黒製品に特化した「イルフォード・フォト」ブランドとして再出発しました。一方で、カラー製品やインクジェット関連はイルフォード・イメイジング・スイスが担当しており、それぞれ異なる企業がブランドを運営しています。

主な製品

イルフォードは、特にモノクロフィルムと印画紙で高い評価を得ています。以下のような特徴的な製品が知られています。

モノクロフィルム: 高感度から超微粒子まで幅広いラインナップがあり、中でもXPシリーズはカラーネガ現像で白黒ネガが得られるという特徴を持っています。また、パンFプラス50やデルタ3200は、それぞれ超微粒子と高感度を追求したフィルムとして知られています。
印画紙: 多階調印画紙「マルチグレード」は、フィルターを交換することで様々な階調表現が可能で、プロの写真家からアマチュアまで広く愛用されています。RCペーパーからバライタペーパーまで多様な種類が用意されています。

日本における展開

日本国内では、かつて中外写真薬品が総代理店でしたが、2008年以降はサイバーグラフィックスに移管されました。銀塩写真の需要が減少する中で、イルフォードは代理店と協力して製品の製造・販売を精力的に行ってきました。2023年からは、ジェットグラフ株式会社（中外写真薬品子会社）が日本総代理店となり、製品供給を継続しています。

製品ラインナップ

フィルム製品

イルフォードは多様な感度のフィルムを提供しています。以下はその一部です。

ISO50: パンFプラス50（超微粒子）
ISO100: デルタ100、パン100
ISO125: FP4プラス125
ISO400: HP5プラス400、デルタ400、パン400、XP2スーパー400（C-41現像対応）
ISO3200: デルタ3200（高感度）
その他: SFX200（赤外線フィルム）

フィルム現像剤

イルフォードはフィルム現像に必要な現像剤も提供しています。以下はその例です。

ID-11（標準現像剤）
イルフォゾル3
イルフォテックDD、DD-X（微粒子濃縮現像液）
イルフォテックHC、LC29、RTラピッド
マイクロフェン（増感現像剤）
パーセプトール（超微粒子現像剤）
フェニゾール

印画紙製品

イルフォードは、多様な階調と仕上げの印画紙を提供しています。以下は主な製品です。

単階調: イルフォスピードRCデラックス、イルフォブロムギャラリーFB
多階調: マルチグレードIV RCデラックス、RCポートフォリオ、RCクールトーン、RCウォームトーン、RCエクスプレス、IV FB、FBウォームトーン
デジタル用: イルフォスピードRCデジタル、ギャラリーFBデジタル

印画紙現像剤

イルフォードは、印画紙現像用の薬品も提供しています。

ブロモフェン
ハーマンクールトーンデベロッパー
ハーマンウォームトーンデベロッパー
2150XL、2000RT
マルチグレードデベロッパー
PQユニバーサル

カメラ製品

かつてイルフォードはカメラの製造も行っていました。以下に一部の製品を記します。

120フィルム使用カメラ: クラフツマン、エンヴォイ
126フィルム使用カメラ: スポーツマン126、スポーツマンCインスタント
127フィルム使用カメラ: スプライト127
135フィルム使用カメラ: エレクトリックシリーズ、スポーツマンシリーズ
* その他のカメラ: ウィットネス、アドヴォケイト、K1モノバー、スプライト35、スプライトラピッドフラッシュ

ハーマン・テクノロジー

ハーマン・テクノロジーは、イルフォード破綻後に設立された企業で、イルフォード・フォトブランドの白黒製品を製造・販売しています。本社はイルフォードが長年所在していたチェシャー州モバリーにあります。インクジェット関連は「ハーマン・フォト」ブランドで展開しています。

まとめ

イルフォードは、長年にわたり銀塩写真の世界で重要な役割を果たしてきたメーカーです。破産と再編を経て、現在はハーマン・テクノロジーが白黒製品を「イルフォード・フォト」ブランドで、イルフォード・イメイジング・スイスがカラー製品とインクジェット製品を担当しています。日本国内では代理店変更を経て、現在も製品の供給が継続されており、銀塩写真愛好家にとって欠かせない存在となっています。

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