126フィルム

126フィルムとは

126フィルムは、コダックが1963年に発表したインスタマチックカメラ用のフィルム規格です。これは、写真撮影をより手軽にするために開発され、カートリッジ式の採用により、フィルムの装填や巻き戻しといった複雑な操作を大幅に簡略化しました。正式名称は「インスタマチックフィルム」とも呼ばれ、国際標準化機構（ISO）によって「ISO 3029」として規格が定められていましたが、現在は廃止されています。

126フィルムの特徴

126フィルムは、35mmフィルムをベースにしていますが、いくつかの点で従来のフィルムとは異なります。最も大きな特徴は、フィルムがプラスチック製のカートリッジに収められていることです。これにより、カメラへの装填はカートリッジを挿入するだけで完了し、フィルムの巻き戻しも不要になりました。また、フィルムにはコマ番号が印刷された裏紙があり、撮影済みのフィルムはカートリッジ内に巻き取られる仕組みです。

画面サイズは28x28mmの正方形で、プリントやマウントには26.5x26.5mm程度の範囲が使用されました。この正方形フォーマットは、縦横の構図を気にせず撮影できるという利点がありました。フィルム感度は、カートリッジ上部のノッチによってカメラに伝達され、自動的に設定される仕組みでしたが、実際には一部の高級機を除き、2段階程度の感度設定しか対応していない機種がほとんどでした。

技術的な背景

126フィルムは、その簡便さから多くの人に受け入れられましたが、いくつかの技術的な制約もありました。特に、フィルムがカートリッジに包まれている構造上、フィルム面の安定性を確保することが難しく、大口径レンズを搭載した高級カメラの開発には不向きでした。そのため、一眼レフカメラは数機種しか登場せず、短命に終わっています。

126フィルムの歴史

1963年、コダックはインスタマチックカメラと同時に126フィルムを発表しました。このフィルムは、写真撮影をより身近なものにし、多くの人々に受け入れられました。コダックだけでなく、他のメーカーも126フィルム対応カメラを製造し、市場は一時的に活況を呈しました。しかし、1971年にコダックが発表した「ポケットインスタマチック」とその110フィルムの登場により、126フィルムは徐々に衰退していきました。110フィルムは126フィルムよりもさらに小型で、より携帯性に優れていたためです。

126フィルムは1999年にコダックでの生産が終了し、他のメーカーもそれに続きました。現在では、126フィルムは生産されていませんが、愛好家の中には、135フィルムを126フィルムの空カートリッジに巻き直して使用するなどの工夫をしている人もいます。

カートリッジ方式の特許

コダックが採用したカートリッジ方式の特許は、ヒューバート・ナーウィンが1962年1月2日に申請し、1964年6月23日に発効したものです。

主なフィルム製品

以下は、かつて販売されていた主な126フィルム製品です。現在はすべて生産終了しています。

コダカラー C126（コダック）
コダカラーII C126（コダック）
コダカラーVR200 126（コダック）
コダカラーX CX126（コダック）
コダックゴールド200 126（コダック）
コダクローム64 126（コダック）
コダクロームX 126（コダック）
フジカラーNK 126（富士フイルム）
フジカラーF-II 126（富士フイルム）
フジカラースーパーHG100 126（富士フイルム）
さくらカラーN100 126（コニカ）
アグフアイソパン126（アグフア・ゲバルト）
アグフアカラーCNS126（アグフア・ゲバルト）
アグフアカラーXRG200 126（アグフア・ゲバルト）
アグフアカラーHDCプラス200 126（アグフア・ゲバルト）
ダイナパン DP126（3M）
ソラリスFG200-24 126（フェッラーニア）
アドカラーインスタマチック200 ADC126（アドックス）

主なカメラ製品

以下は、かつて販売されていた主な126フィルム対応カメラです。こちらもすべて生産終了しています。

アグフアマチックシリーズ（アグフア）
アーガスレイディケアフリー（アーガス）
ウニマティックII（ベンチーニ）
キヤノンの126フィルム使用カメラ（キヤノン）
フェッラーニアの126フィルム使用カメラ（フェッラーニア）
フェックス/アンドシリーズ
GAFシリーズ
ハリナシリーズ
イルフォードの126フィルム使用カメラ（イルフォード）
コダックインスタマチックシリーズ（コダック）
コニカの126フィルム使用カメラ（コニカ）
ミノルタの126フィルム使用カメラ（ミノルタ）
オリンパスの126フィルム使用カメラ（オリンパス）
ローライの126フィルム使用カメラ（ローライ）
ヤシカの126フィルム使用カメラ（ヤシカ）
コンタフレックスの126フィルム使用カメラ（ツァイス・イコン）
* フォクトレンダーの126フィルム使用カメラ（フォクトレンダー）

まとめ

126フィルムは、その簡便さと手軽さから、一時は広く普及したフィルム規格です。しかし、より小型で携帯性に優れた110フィルムの登場や、デジタルカメラの普及により、その役割を終えました。現在では、126フィルムとその対応カメラは、貴重なコレクターアイテムとなっています。

126フィルムの歴史は、写真技術の進化と変遷を示す良い例であり、その技術的な制約と工夫は、今日のデジタルカメラの発展にも繋がっていると言えるでしょう。

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