イロク

クロアチア東部の都市イロク：歴史と文化、ワインが織りなす魅力

イロク（Ilok）は、クロアチア東部、ヴコヴァル＝スリイェム郡に位置する都市です。ドナウ川を挟んでセルビアのヴォイヴォディナと国境を接しており、その地理的な特性から、歴史的に様々な文化が交錯してきました。ハンガリー語では「新しい場所」を意味する「Újlak（ウーイラク）」と呼ばれています。

多様な民族が織りなす文化

2001年の国勢調査によると、イロクの市街人口は約5,897人、基礎自治体全体では約8,350人です。市内にはバプスカ、シャレングラド、モホヴォなどの村が含まれています。イロクは、クロアチア国内で最もスロバキア人のマイノリティが多い自治体としても知られています。民族構成はクロアチア人が多数を占めますが、スロバキア人、セルビア人、ハンガリー人など、多様な民族が共存しています。

古代から中世、そして近現代へ

イロク周辺地域には、新石器時代から人が居住していたとされています。ローマ時代には集落やドナウ川の要塞が築かれました。6世紀にはスラヴ人が移住し、中世にはブルガリア帝国の支配を経て、ハンガリー王国の一部となりました。12世紀から13世紀にかけては、交易都市として発展し、様々な名称で記録に登場します。13世紀末には、ハンガリー王が有力貴族であるチャーク家にヴィラク・カストルムを与えました。13世紀から14世紀にかけては、チャーク・ウグリンが領有する半独立国・上スレムの首都として繁栄しました。

1526年、イロクはオスマン帝国の支配下に入り、ムスリムが多数を占めるようになります。1697年にハプスブルク君主国の軍隊が町を占領すると、オスマン人やムスリム住民は町から逃れました。ハプスブルク支配下では、クロアチア王国やハンガリー王国とともにスラヴォニア王国に属しました。その後、オーストリア＝ハンガリー帝国の崩壊を経て、ユーゴスラビア王国の一部となり、第二次世界大戦後はユーゴスラビア社会主義連邦共和国のクロアチア社会主義共和国となりました。

1991年のクロアチア紛争時には、セルビア人勢力によって占領され、多くのクロアチア人や非セルビア人が町から逃れましたが、周辺地域の急速な占領と破壊は免れました。1991年から1995年まで、イロクはクライナ・セルビア人共和国の支配地域となり、1998年にクロアチアに平和的に再統合されました。現在も、ドナウ川に浮かぶシャレングラド島はセルビアが実効支配しています。

文化遺産とワインの魅力

イロクは、ドナウ川の国境の町として、またクロアチア最東端の地として、重要な文化的・歴史的な遺産を多く有しています。ゴシック教会やオスマン時代のイスラム様式の建物の跡など、東西の文化が融合した独特の景観は、訪れる人々を魅了します。また、イロクは豊富なワインの生産地としても知られており、毎年9月下旬から10月上旬には、伝統的な行事であるぶどうの収穫祭が開催されます。イロクの地元料理や、トラミナー、ブルグンディ、グラセビナなどのイロクワインは、クロアチア国外でも高い評価を得ています。

イロクは、その歴史、文化、そしてワインの魅力によって、クロアチアの中でも特に興味深い都市の一つと言えるでしょう。

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