ブルガリア帝国

ブルガリア帝国

ブルガリア帝国は、現在のブルガリアを中心とした地域で、歴史的に複数の段階を経て存在したブルガリア人の帝国です。その歴史は、テュルク系の遊牧民ブルガール人が、南スラヴ人と融合して形成された民族と深く結びついています。

第一次ブルガリア帝国 (681年 - 1018年)

5世紀から7世紀にかけて、スラヴ人とブルガール人はモエシア地方に侵入し、この地で勢力を拡大しました。670年代にはアスパルフ率いるブルガール人が、東ローマ帝国領内のドナウデルタ付近に定住し、在地のスラヴ民族と同盟を結びました。680年には、東ローマ帝国との間でオングロスの戦いが行われました。

681年、東ローマ帝国との講和条約が結ばれ、ドナウ川下流の南北に第一次ブルガリア帝国が成立しました。これは、現存する最古のスラヴ人国家とされています。少数派のブルガール人が支配階層を形成し、多数派のスラヴ人との間で融合が進みました。8世紀初頭にはテルヴェルが君主となり、東ローマ皇帝ユスティニアノス2世から「カエサル」の称号を授与されました。

9世紀初頭、クルムの治世下でブルガリア領は拡大し、国家機構も発展しました。9世紀から10世紀にかけては、ボリス1世とシメオン1世の治世下で帝国は文化的な最盛期を迎えました。864年のキリスト教化により、ブルガリアはスラヴ・ヨーロッパの文化と文学の中心地となりました。この時期は、ブルガリアの黄金時代とされています。893年には、プレスラフ文学学校でキリル文字が発明され、古代教会スラヴ語による典礼が確立しました。

しかし、971年には首都プレスラフがキエフ大公国と東ローマ帝国によって占領され、1018年には第一次ブルガリア帝国は滅亡し、東ローマ帝国の属州テマ・ブルガリアスとなりました。

西ブルガリア帝国

976年に独立を回復しましたが、マジャル（後のハンガリー王国）や東ローマ帝国との戦いに苦戦しました。986年のトラヤヌスの門の戦いを機に、東ローマ帝国との30年戦争が激化。1014年にはクレディオン峠の戦いでサムイル帝が戦死し、1018年にはブルガリアは東ローマ皇帝バシレイオス2世によって完全に併合され、西ブルガリア帝国は滅亡しました。

第二次ブルガリア帝国 (1185年 - 1396年)

1185年、アセンとペタルという二人の貴族による蜂起の後、中世ブルガリア国家は第二次ブルガリア帝国として復興しました。14世紀後半（1422年とする異説もあるが、通常は1396年を滅亡年とする）にオスマン帝国によってバルカン半島が侵略されるまで存続しました。

1256年までバルカン半島における支配的な勢力であり、東ローマ帝国との戦いに勝利を重ねました。1205年にはカロヤン・アセンがアドリアノープルの戦いでラテン帝国軍を撃破し、甥のイヴァン・アセン2世はエピロス専制侯国を破り、ブルガリアを再び地域大国にしました。彼の治世下では、ブルガリアはアドリア海から黒海へと領土を拡大し、経済も繁栄を迎えました。13世紀前半にはイヴァン・アセン2世の下で、ブルガリアはかつての勢力をほぼ回復しましたが、国内問題や外国からの侵略により、その繁栄は長くは続きませんでした。

14世紀までのブルガリア文化の第二黄金時代として知られる時期には、文学、芸術、建築が栄えました。首都タルノヴォは「ニューコンスタンティノープル」と見なされ、ブルガリアの文化的な中心地であり、正教会の中心地にもなりました。ブルガリアの画家や建築家は、独自の特徴的なスタイルを生み出しました。

13世紀から14世紀にかけては、モンゴル帝国の後継国家であるジョチ・ウルスの従属国となりました。1371年のイヴァン・アレクサンダル死後、ブルガリアは3つに分裂し、その後数十年にわたってオスマン帝国の支配下に置かれました。1393年には首都タルノヴォがオスマン帝国に占領され、1396年にはヴィディン王国も敗れ、第二次ブルガリア帝国は滅亡しました。

オスマン帝国による征服後、多くのブルガリア人聖職者や学者が、セルビア、ワラキア、モルダヴィア、ルーシの諸公国に移り、各地でブルガリアの文化や文献、ヘシカズム思想などを伝えました。

脚注

関連項目
ブルガリア君主一覧
ブルガリア方言
ブルガリア・東ローマ戦争
初期キリル文字
ブルガリアの歴史
バルカンの歴史
外部リンク
* 『ブルガリア帝国』 - コトバンク

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