イワウチワ

イワウチワ（岩団扇）とは

イワウチワ（学名：Shortia uniflora）は、イワウメ科イワウチワ属に分類される多年草です。その名の通り、丸い葉が団扇に似ていることが特徴で、春の山野を彩る可憐な花として知られています。

特徴

葉は長さ2.5～7cm程度で、円形に近い形状をしています。葉の縁には細かい鋸歯があり、基部は心形に深く切れ込んでいます。これらの特徴的な葉の形状が、和名の由来となっています。

開花時期は4月から5月にかけてで、葉腋から伸びた花茎の先に、直径3cmほどの薄紅色の花を一つ咲かせます。花弁は5つに深く裂けており、5本の雄しべがあります。花が終わると、花弁は花茎から離れて落下します。

花言葉は「春の使者」「適応力」です。

分布と生育環境

イワウチワは、本州の中国地方以北の山地帯に分布しています。主に広葉樹林の林内や林縁に見られ、雪解けとともに芽を出し、開花します。日本固有の植物であり、基準標本は岩手県で採取されたものです。

富山県宇奈月町では町の花の一つに指定されています。また、植物研究家である田中澄江氏の著書『花の百名山』では大岳山を代表する花として、『新・[[花の百名山]]』では雲取山を代表する花として紹介されており、山野草としても人気があります。

種の保全状況

イワウチワは、環境省によるレッドリストには指定されていませんが、各都道府県では以下のように指定されています。

絶滅危惧IB類（EN）：山梨県
絶滅危惧II類（VU）：宮城県、茨城県、三重県、兵庫県
準絶滅危惧（NT）：東京都、鳥取県

これらの指定からもわかるように、イワウチワは多くの地域で絶滅の危機に瀕しており、保護の必要性が高まっています。上信越高原国立公園、中部山岳国立公園、八ヶ岳中信高原国定公園などの自然公園では、自然公園指定植物として保護されています。

近縁種

イワウチワには、以下のような近縁種や変種が存在します。

アマミイワウチワ（Shortia rotundifolia var. amamiana）：奄美地方固有の変種で、環境省レッドリストでは絶滅寸前（絶滅危惧IA類・CR）に指定されています。
オオイワウチワ (Shortia uniflora var. uniflora)
コイワウチワ（Shortia uniflora var. kantoensis）
トクワカソウ（Shortia uniflora var. orbicularis）
シマイワウチワ（Shortia rotundifolia）：沖縄や台湾に分布し、白い花を咲かせます。環境省レッドリストでは準絶滅危惧（NT）に指定されています。

イワウチワの葉は、同じイワウメ科のイワカガミとよく似ていますが、イワカガミの方が葉の縁の鋸歯がより鋭く、光沢が強いという違いがあります。また、イワウチワの方が開花時期が早いことも特徴です。

まとめ

イワウチワは、春の山野を彩る美しい花ですが、生育環境の変化により、その数は減少傾向にあります。貴重な植物を守るため、自然環境への配慮が求められています。

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