イワオヌプリ

イワオヌプリ：硫黄の息吹と歴史が織りなす北海道の活火山

北海道虻田郡倶知安町と磯谷郡蘭越町にまたがるイワオヌプリは、標高1,116mの活火山です。ニセコ連峰東山系に位置し、ニセコ積丹小樽海岸国定公園に属しています。アイヌ語で「イワウ・ヌプリ（iwaw-nupuri）」、つまり「硫黄の山」を意味するその名にふさわしく、今もなお火山活動の痕跡を色濃く残す山です。

ニセコ連峰の中でも最も若い火山であるイワオヌプリは、江戸時代後半から20世紀初頭にかけて山頂部で噴気活動があったと記録されています。現在でも、山頂西側には350m×250mの火口があり、その中心には直径約100mの火口が入れ子状に存在。硫黄の結晶や火山礫に覆われた山肌からは、噴気活動を伴う温泉が噴出しています。一方、東側の火口は噴気活動がほとんど見られず、山頂部は東側に開けた独特の地形をしています。

イワオヌプリとニトヌプリの間には、直径約900mのカルデラ状の窪地が広がり、その中心には標高1,039mの小イワオヌプリが位置しています。これらの地形は、過去の火山活動の規模と複雑さを物語っています。

イワオヌプリ北側の硫黄川沿いには、かつて活況を呈した硫黄鉱山の跡地が残されています。江戸時代後半から存在したこの鉱山は、明治期以降、マッチの原料としての硫黄需要の高まりとともに本格的な採掘が始まりました。特に1886年（明治19年）、三井財閥による北海道初の蒸気精錬導入を機に生産は拡大し、大正時代には約200人が生活するほどの盛況を極めました。しかし、1944年（昭和19年）に閉山。現在は耐火レンガなどが散乱するのみですが、その歴史は2009年に経済産業省の「近代化産業遺産群」に選定されることで認められています。

イワオヌプリ周辺には、ニセコアンヌプリ（1,308.2m）、ワイスホルン（1,045.8m）、ニトヌプリ（1,080m）、チセヌプリ（1,134.2m）など、多くの山々が連なります。これらの山々と共に、イワオヌプリはニセコ連峰の壮大な景観を形作っています。今もなお活動を続ける活火山としての姿、そして歴史的な硫黄鉱山跡という二つの側面を持つイワオヌプリは、北海道の自然と歴史を深く知る上で欠かせない存在と言えるでしょう。登山やハイキングを通じて、その雄大な自然と歴史に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。

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