イワキアブラガヤ

イワキアブラガヤ (Scirpus hattorianus)

イワキアブラガヤはカヤツリグサ科に属する植物で、1933年に牧野富太郎によって記載されました。最初の発見は日本の福島県ですが、その後は北アメリカでも見つかっており、現在ではその分布についての研究が行われています。この植物は特に大柄な草本で、花茎は1メートルを超える大きさになります。

特徴

イワキアブラガヤの花茎は若干太く、表面は滑らかで、葉がついています。葉の長さは20～30cm、幅は8～10mmで、扁平な線形となっており、基部には長さ4～5cmの鞘があります。花序は花茎の先端に形成され、その長さは5～10cmで、2～3個の苞が細長い形状でついています。小穂は8～40個が集まって頭状を形成し、広卵形で先端が鈍く尖った特徴を持ち、長さは2～2.5cmで灰黒色がかっています。鱗片の先端はわずかに鈍く、痩果は鱗片よりやや短い楕円形です。花被には4～5個の細い刺針がついており、これらは直立しています。

分布

イワキアブラガヤは、日本では福島県で最初に確認され、その後滋賀県など数カ所で報告されていますが、これらの一部は誤同定とされ、確認が取れたのは福島県の一部地域のみです。北アメリカでも広い範囲で分布しており、特に東部地域に多く見られます。日本での記録は一時的な帰化種によるものと考えられています。

類似種

本種は北アメリカ産のセフリアブラガヤ (S. georgianus) とよく似ており、一時期は同種と見なされていましたが、現代では別種とされています。セフリアブラガヤの特徴としては刺針の本数が1～3個と少なく、痩果がかなり短いことが挙げられます。このセブリアブラガヤも1980年に福岡県で発見され、その後栃木や神奈川でも確認されています。

経緯

イワキアブラガヤの最初の記録は1925年に採集された標本に基づいています。その後、発見地についての誤解があり、正確には福島県の岩代国地域から採集されたものであることが示されました。しかし、その後は1955年以降の確認がなく、本種の日本での存在は非常に短期間だったと考えられています。大井次三郎は、「本種が日本産かどうかに疑いがある」と述べ、この植物は一時的に帰化したのではないかと指摘しています。さらに、黒沢らの2015年の研究によると、イワキアブラガヤの標本はすべて元の発見地に由来するものである可能性が高いとのことです。

研究の必要性

本種の分子系統研究には、古い植物標本から得られるDNAが重要です。しかし、乾燥標本ではDNAの劣化が起こりやすく、解析は非常に困難です。兼子らの研究では、日本の標本と北アメリカの標本が塩基配列で一致することが示され、両者が形態的にも遺伝的にも同一である可能性が高いとされています。これにより、日本に存在した時期が比較的最近であることが示唆されており、イワキアブラガヤが北アメリカからもたらされた帰化植物であるという見方が広がっています。

まとめ

イワキアブラガヤは、日本の福島県で発見された植物で、北アメリカに広範囲に分布しています。日本での生息は一時的とされ、さらなる研究が求められています。植物の多様性や帰化の歴史を知る上で貴重な種と言えるでしょう。

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