イワチドリ

イワチドリ（岩千鳥）

イワチドリ（学名：Ponerorchis keiskei）は、ラン科に属する多年草で、日本固有の植物です。かつては Amitostigma keiskei という学名で知られていましたが、近年の分類学的研究により、ウチョウラン属(Ponerorchis)に組み込まれ、学名が変更されました。別名として「八千代」とも呼ばれています。

特徴

イワチドリは、本州（中部地方以西）と四国の山地の渓谷に自生し、岩の割れ目などに根を張って生育します。草丈は10cm程度と小さく、4月下旬から5月中旬にかけて、直径1cmほどの桃紫色の可愛らしい花を咲かせます。その可憐な姿から「渓谷の妖精」と称されることもあります。主な繁殖方法は球根によるもので、野生の個体数は減少傾向にあります。特に、岐阜県では人の手が届く範囲での自生地では絶滅状態にあると報告されています。一方で、園芸品種としての流通があり、愛好家の間で栽培されています。

分類

イワチドリの分類は、過去に何度か変更されています。

1879年、カール・ヨハン・マキシモヴィッチによって Gymnadenia keiskei として初めて記載されました。しかし、この学名は既に別のラン科植物に与えられていたため、非合法名となりました。
1900年、アシル・ウジェーヌ・フィネは、本種を Gymnadenia gracilis の変種とみなし、Gymnadenia gracilis var. keiskei という学名を提唱しました。これが最初の合法名となります。
1919年、ルドルフ・シュレヒターはイワチドリをヒナラン属（Amitostigma）に移し、Amitostigma keiskei と改名しました。
2014年の分子系統学的研究によって、イワチドリ属（Amitostigma）、ミヤマモジズリ属（Neottianthe）、ウチョウラン属（Ponerorchis）は、単一の分岐群内に混在しており、それぞれが単系統群を形成しないことが判明しました。その結果、イワチドリ属とミヤマモジズリ属はウチョウラン属に統合され、イワチドリの学名も Ponerorchis keiskei に変更されました。

生育環境

イワチドリは、湿り気のある岩場や渓流沿いの岩壁を好みます。このような環境に適応した生育をしており、他の植物が生育しにくい場所でも見られます。しかし、自生地の環境変化や盗掘などにより、個体数が減少しています。

その他

イワチドリは、その可憐な姿から園芸植物としても人気があります。しかし、野生の個体は減少しているので、栽培する場合は、適切な環境で育てることが大切です。

脚注

イワチドリは、日本の固有種であり、限られた地域にしか自生していません。
学名の変遷は、植物分類学の進展と研究の深化を示すものです。
園芸品種として流通していますが、野生の個体は保護が必要です。

外部リンク

ウィキメディア・コモンズには、イワチドリに関するメディアがあります。
『イワチドリ』 - コトバンク
Biglobe, イワチドリ, 岩千鳥 , オオイワチドリ, 大岩千鳥 Amitostigma keiskei
Hardy Terrestrial Orchids, Brooklyn Botanical Garden, Amitostigma keiskei
Centro Bonsai Tenerife, Amitostigma keiskei (iwa-chidori)

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