イワヒバ科

イワヒバ科について

イワヒバ科（学名: Selaginellaceae）は、ヒカゲノカズラ植物門に属する特徴的な植物群です。この科はイワヒバ属のみで構成されており、約800種が確認されています。その中で日本国内では17種が確認されており、一部は栽培も行われています。イワヒバ科の植物は、地面に生えたり、岩や樹木に着生したりするなど、さまざまな環境で生息しています。

植物の形態

イワヒバ科の植物は、通常は細長い茎が発展し、枝分かれをしながら成長します。茎の表面には鱗片状の葉が密生し、形状は種によって異なります。クラマゴケのように地面を這う小型のものは、苔に似た外見を持ちます。一方、カタヒバやコンテリクラマゴケのように茎の一部が立ち上がって、シダの葉に似た形になることもあります。特にイワヒバでは、複数の根が集まり仮茎を形成し、小さなヤシの木に似た姿を見せます。

これらの植物は、外見がヒカゲノカズラ科に似ているものの、いくつかの重要な違いがあります。ヒカゲノカズラ科の植物は茎に螺旋状に葉をつけるのが特徴的ですが、イワヒバ科の場合は茎が腹背を持ち、葉にも偏平な形状が多く見られます。

ただし、目立った形状の違い以外にも、イワヒバ科に特有の重要な特徴が存在します。それは担根体と呼ばれる構造と、胞子と前葉体の性質です。

担根体の特徴

イワヒバ科の特性である担根体は、茎から下方に延びる構造で、そこから根を発生させます。クラマゴケに見られるように、この構造は地表近くを横に這う茎の分岐部から形成されます。担根体は上向きに伸びて根が地中に展開するため、外見的には気根に似せられることもあります。

担根体が実際に茎なのか根なのかについての議論は長きにわたって続いています。根だとする立場は、正の屈地性を持ち、構造的にも根に似ている点にありますが、根毛や根冠がないことからまた異なるとされます。これに対し茎であるとする意見もあり、担根体は植物体における根、茎、葉、そしてこの担根体の4つの構成要素から成り立つという考えも生まれています。

胞子と前葉体の発展

イワヒバ科の胞子は、茎の先端に形成される多くの胞子葉から成る胞子葉穂の部位に発生します。胞子嚢はそれぞれの胞子葉に包まれ、形成される際には大胞子嚢と小胞子嚢が存在します。外見での差は微小ですが、大胞子嚢には男子（小胞子）を供給する多数の胞子が現れ、雌性の前葉体が生じる一方で、小胞子嚢には数個の小胞子が存在し、雄性の前葉体を作ります。

イワヒバ科の前葉体の独特な点は、胞子が発芽する際に外に出ず、胞子壁の内部で成熟するところです。このタイプの前葉体は「内生型」と呼ばれ、特に雄性の前葉体では、内部で造精器が発達し、精子を外に放出します。雌性の前葉体は、胞子の内部で細胞分裂が進み、胞子壁の一部が破れて根と造卵器を形成します。

このように内生で発達する前葉体の特徴は、現生のシダではイワヒバ科のみに見られる特異なもので、外部の土壌で大きく成長することなく進化していく点は、種子植物に共通する側面とも言えます。イワヒバ科の前葉体は授精が内部で行われ、その後、胚が形成される過程は、種子植物の胚嚢において卵細胞が受精していく様子にも似ています。場合によっては、外部からの影響で受粉と同様の現象が発生することもあります。

さらに、大胞子嚢内に限って胞子が1つのみの場合、胞子が外に出することなく発芽し、その状態で成長すれば、これは「種子」としても認識されることになります。現代の種子植物の全ては大葉類から派生していると考えられている一方で、かつては小葉類にも種子を持つ植物が存在していたという説もあります。

分類と生息環境

イワヒバ科は、主に熱帯地域を中心に800種が知られており、これらは多様な形態や生育環境が存在します。葉の形状により、コケスギラン亜属とイワヒバ亜属に分かれることがありますが、具体的な分類についての統一見解はありません。

日本産の代表的なイワヒバ科の種には、次のようなものがあります：

• - コケスギラン (S. selaginoides)
• - ヒモカズラ (S. shakotanensis)
• - イワヒバ (S. tamariscina)
• - カタヒバ (S. involvens)
• - クラマゴケ (S. remotifolia)
• - オニクラマゴケ (S. doederrleinii)
• - コンテリクラマゴケ (S. unicata)

このように、イワヒバ科はその多様性と特異性により、興味深い研究対象であり、さまざまな環境での適応の観点からも重要な植物群として知られています。

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