イワヤナギシダ

イワヤナギシダ（Loxogramme salicifolia）

イワヤナギシダは、ウラボシ科に分類される常緑性のシダ植物です。その名の通り、岩の上に生え、柳の葉のような細長い葉を持つことが特徴です。

特徴

形態: 小型で、根茎は長く横に這って伸びます。根茎の直径は1.3-2mmで、表面には赤褐色の鱗片がやや密生しています。鱗片は膜質で、卵状披針形をしており、先端が鋭く尖っています。葉柄は淡緑色で、褐色を帯びることはありません。
葉: 葉身は狭倒披針形から線形で、長さは15-20cm、幅は1-1.7cmです。縁は滑らかで、先端は尖っています。基部に向かって次第に狭くなり、葉柄の翼に繋がります。中肋は表面に盛り上がり、裏面は平らです。葉脈は網状で、網の目には遊離脈があります。
胞子嚢群: 線形で、葉脈に沿って主脈の両側に平行に多数並びます。葉身の先端から中央部、またはそれより基部まで伸び、中肋の近くから縁近くまで広がります。長さは3cmに達することもあり、中肋とは鋭角に交わって斜め上に伸びます。

分布と生育環境

イワヤナギシダは、日本では本州の千葉県以西、四国、九州、琉球列島（沖縄本島以北）に分布しています。国外では、朝鮮（済州島）、中国、台湾でも見られます。山地の森林内の、やや湿った岩の上や樹幹に着生して生育します。

類似種との比較

イワヤナギシダは、サジラン属（Loxogramme）に属しており、この属にはアジアの熱帯域を中心に約40種が存在します。日本には4種が産し、イワヤナギシダに似た種がいくつかあります。

ヒメサジラン (L. grammitoides): 葉の長さが2-12cmと小型で、根茎も細いです。
ムニンサジラン (L. boninensis): 胞子嚢群が細く、葉の縁に近い位置まで伸びることが特徴で、小笠原諸島の固有種です。
サジラン (L. duclouxii): 大きさや形、生育環境、分布域がイワヤナギシダと共通しています。主な区別点として、イワヤナギシダの葉柄が緑色であるのに対し、サジランは基部近くから紫褐色から黒褐色に着色し、光沢があります。また、葉の形もわずかに異なります。胞子嚢群の傾き具合にも違いがあり、イワヤナギシダの方がより傾斜が大きいです。

これらの類似種は、遺伝的に近い関係にあると考えられていますが、詳細な検証が必要です。

種内変異

フギレイワヤナギシダ (f. pinnatifida): 葉の縁に突起がある変異種ですが、奇形的なものと考えられています。
ヒメイワヤナギシダ: 小型で、ヒメサジランとの雑種と推定されています。

保護の状況

イワヤナギシダは、環境省のレッドデータブックには掲載されていませんが、千葉県、東京都、神奈川県、京都府など、一部の都府県では絶滅危惧種に指定されています。これは、環境悪化や森林の減少が主な原因です。

参考資料

岩槻邦男 編 (1992)『日本の野生植物 シダ』 平凡社
海老原淳 (2017)『日本産シダ植物標準図鑑 II』 学研プラス
* 光田重幸 (1986)『検索入門しだの図鑑』保育社

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