インカンテーション

インカンテーション：呪文のごとく駆け抜けた競走馬の生涯

2010年3月24日、北海道浦河町の谷川牧場で生まれた競走馬、インカンテーション。その名は「呪文、呪術」を意味し、父馬の名に由来しています。牧場時代から優れた運動能力と真面目な性格で注目を集め、将来を嘱望されたサラブレッドでした。

華々しいデビューから重賞制覇へ

2012年7月、中京競馬場でデビュー戦を迎えたインカンテーションでしたが、結果は15着と芳しくありませんでした。しかし、その後ダートに転向すると才能が開花。未勝利戦を制し、競走馬としてのキャリアを着実に積み重ねていきます。

3歳となった2013年、インカンテーションは沈丁花賞で圧勝。続くレパードステークスでは、1番人気に応え見事重賞初制覇を飾りました。このレースでは、騎手の大野拓弥騎手と息の合った素晴らしいレース運びを見せました。続くみやこステークスでは惜しくも2着に敗れましたが、その潜在能力の高さを改めて示しました。

幾多の苦難を乗り越え

4歳以降もインカンテーションは数々の重賞レースに挑戦します。みやこステークスで2勝目を挙げ、5歳時には平安ステークスを制し重賞3勝目を達成しました。しかし、この頃より故障に悩まされるようになり、長期休養を余儀なくされます。左後肢第1指骨の骨折、左腸骨の骨折と、復帰のたびに新たな試練が待ち受けていました。

復活劇と輝かしい引退

6歳、7歳と怪我による長期休養を挟みながらも、インカンテーションは諦めずに走り続けました。7歳時にはマーチステークスで1年10ヶ月ぶりの勝利を挙げ、その後も白山大賞典、武蔵野ステークスと立て続けに重賞を制覇。7歳にして、そのキャリアのピークを迎えました。

8歳シーズンも現役を続行。フェブラリーステークスで3着に入るなど、その力は衰えることを知りませんでした。しかし、左前脚のけいじん帯炎を発症したため、2018年12月、惜しまれつつも現役を引退することとなりました。

種牡馬としての成功

引退後は種牡馬として活躍の場を移したインカンテーション。2019年から供用を開始し、数々の優秀な産駒を輩出しています。地方競馬、中央競馬の両方で勝利を収めた産駒もおり、父馬としての成功も収めています。

血統背景

インカンテーションの父はシニスターミニスター。母方の血統には、イギリスオークスやキングジョージ6世&クイーンエリザベスステークスなどG1競走を4勝した名牝Time Charterの名があり、その優れた血統背景も、インカンテーションの競走能力を支えていました。

最後に

数々の重賞勝利、そして種牡馬としての成功。インカンテーションは、その競走馬人生において、数々のドラマを私たちに見せてくれました。怪我に苦しみながらも、持ち前の闘志と才能で幾多の困難を乗り越え、輝かしい足跡を残した名馬として、これからも語り継がれていくことでしょう。

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