イングランド (護衛駆逐艦)

USS England (DE-635): 対潜戦の英雄

USS England (DE-635)は、アメリカ海軍のバックレイ級護衛駆逐艦の一隻であり、第二次世界大戦中に目覚ましい活躍を見せました。特に、太平洋戦争中の1944年5月、わずか12日間で6隻もの日本海軍潜水艦を撃沈するという前例のない記録を打ち立て、対潜戦の歴史にその名を刻みました。この記事では、その輝かしい戦績と、その後の悲劇的な運命について詳しく解説します。

艦名の由来と進水

艦名は、1941年12月7日の真珠湾攻撃で戦艦「オクラホマ」にて戦死したジョン・C・イングランド少尉に敬意を表して命名されました。1943年9月26日、カリフォルニア州サンフランシスコのベスレヘム造船にて、イングランド少尉の母であるH.B.イングランド夫人によって進水。同年12月10日、W.B.ペンデルトン中佐の指揮の下、就役しました。

戦歴

就役後、イングランドはサンフランシスコを出発し、真珠湾、フナフティ、ガダルカナル島を経由して1944年3月12日にエスピリトゥサント島に到着。エスピリトゥサント島とガダルカナル島間の護衛任務に従事し、時折ヌーメアやマーシャル諸島へも航海しました。

驚異的な対潜戦の記録

1944年5月、イングランドは驚くべき対潜戦の記録を打ち立てます。

伊16撃沈: 5月18日、伊16を撃沈。5回のヘッジホッグ攻撃の末、4発から6発が命中し、艦尾が持ち上がるほどの大きな水中爆発が発生しました。
呂106撃沈: 5月22日、「ジョージ」と共同で呂106を撃沈。3度目のヘッジホッグ攻撃で少なくとも3発の命中を確認、大きな水中爆発が起こりました。
呂104撃沈: 5月23日、「ラビー」「ジョージ」と共同で呂104を撃沈。2度目の攻撃で10発から12発の起爆を確認し、潜水艦が破壊される音が続きました。
呂116撃沈: 5月24日、「ジョージ」と共同で呂116を撃沈。最初のヘッジホッグ攻撃で3発から5発の爆発を確認。主要な爆発音以降は破壊音が聞こえず、早期に沈んでいきました。
呂108撃沈: 5月26日、「ラビー」と共同で呂108を撃沈。最初のヘッジホッグ攻撃で4発から6発の爆発を確認。暁の海面に油が噴出しているのが観測されました。
呂105撃沈: 5月31日、「ジョージ」、「ラビー」、「スパングラー」と共同で呂105を撃沈。6発の爆発を記録し、大きな爆発が起こり、海面に油や破片が噴出しました。

これらの戦果により、イングランドは殊勲部隊章を受章。アーネスト・キング海軍作戦部長は「アメリカ海軍に常にイングランドあり」と称賛しました。

その後の活動と終焉

1944年夏以降は、ソロモン諸島北部での護衛任務や、レイテ島への増援輸送船団の護衛などに従事。1945年3月には沖縄への上陸前砲撃支援に参加しました。

しかし、1945年5月9日、沖縄での警戒任務中に日本軍の急降下爆撃機による攻撃を受けます。最初の1機を撃墜するも、敵機は右舷側艦橋直下に突入。爆弾が炸裂し、37名の死者・行方不明者と25名の負傷者を出す大損害を受けました。

修理のためフィラデルフィアに回航されましたが、終戦に伴い修理は中止。損傷が大きすぎ、同型艦も余剰となっていたため、1945年10月15日に退役し、1946年11月26日にスクラップとして売却されました。

栄光の記憶

USS Englandは、その短い生涯の中で、比類なき対潜戦の記録を打ち立て、アメリカ海軍の歴史にその名を刻みました。その功績を称え、1960年にはリーヒ級ミサイル巡洋艦の一隻が「イングランド」（USS England, DLG-22）と命名されました。

褒章

殊勲部隊章
アジア・太平洋戦役勲章 10個
* 第二次世界大戦戦勝記念章

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