イングランドの地理

イングランド：地理、気候、そして文化の織りなす多様な地域

イングランドは、グレートブリテン島の南部と中部を占める地域であり、北はスコットランド、西はウェールズと国境を接しています。フランスとはイギリス海峡を挟んで33kmと非常に近く、英仏海峡トンネルによって直接大陸と結ばれています。

多様な地形

イングランドの地形は、概ねなだらかな丘陵地帯ですが、ペナイン山脈が東西に島を貫き、北部は山岳地帯が広く分布しています。湖水地方、ヨークシャー・ムーアズ国立公園、ピーク・ディストリクトなど、北部やミッドランド地方には特徴的な山岳地形が見られます。ティーズ川とエクス川を結ぶ線は、南部平野部と北部山岳部の境界とよく捉えられています。南部にはイースト・アングリアやフェンズなどの平野が広がり、コッツウォルズ丘陵、チルターン丘陵、ノース・サウス・ダウンズ丘陵など、起伏に富んだ丘陵地帯も存在します。

イングランド最大の天然港は、南海岸のプールにあります。その規模は世界第二位との説もありますが、いまだ議論の余地があります。

温帯海洋性気候

イングランドは温帯海洋性気候に属し、年間を通して降水量が多いのが特徴です。季節による気温差はありますが、30℃を超える猛暑や-5℃を下回る極寒は稀です。南西風が卓越し、大西洋からの暖かく湿った空気を運びます。東部は乾燥しやすく、南部は最も気温が高くなります。降雪は冬から早春にかけて見られますが、高地を除けば頻度は高くありません。年間を通して他の連合王国諸国と比較すると、イングランドは最も気温が高く、日照時間も長いです。特に7月の日照時間は最も長く、192.8時間に達します。

最高気温記録はケント州で観測された38.5℃（2003年）、最低気温記録はシュロップシャーで観測された-26.1℃（1982年）です。南西イングランドは、他の地域と比べて温暖な独自の気候を持ち、植物の生育が早いのが特徴です。地域による気候の違いは、植物の生育帯にも反映され、イングランドは主にゾーン8に位置しますが、山岳地帯はゾーン7、沿岸部やロンドンはゾーン9に属し、シリー諸島の一部は亜熱帯に近いゾーン10に属します。

古代から現代まで続く地質

イングランドの地質は主に堆積岩で構成され、南東部が最も新しい地層、北西部が最も古い地層となっています。ティーズ川とエクス川を結ぶ線は、地質構造の境界を示しており、南東部は比較的低く平坦な地形で、北西部は高低差が大きく硬い地層から成り立っています。イングランド各地の地質は、それぞれ異なる風景を作り出しています。北イングランドと西イングランドの地質はウェールズやスコットランドと類似しており、南イングランドと東イングランドの地質は北フランスやベルギーと共通しています。

主な地理的特徴としては、チェダー峡谷（グレートブリテン島最大の峡谷）、ジュラシック・コースト（ユネスコ世界遺産）、ソールズベリー平原、ロンドン盆地、ハンプシャー盆地、ダートムーア、リザード・コンプレックスなどが挙げられます。地理的資源としては、石炭、北海油田、砂礫、陶土、銅、スズ、岩石、北海ガスなどが豊富です。地熱エネルギーや陸上油田も存在しますが、規模は小さいです。

主要都市と人口分布

ロンドンはイングランド最大の都市であり、世界的に見ても巨大な都市圏を形成しています。イングランド中部・北部にも、大きな影響力を持つ都市が数多く存在します。「都市」の定義が曖昧なため、イングランドにおける都市規模のランキングは議論の的になりますが、バーミンガム、マンチェスター、リバプール、リーズ、シェフィールドなど多くの都市が大きな人口を抱えています。

イングランドの地形は、南東部とミッドランド地方の低地と、北西部高地という2つの主要な地域に分けられます。イースト・アングリアは丘陵が少なく、最も低い地域です。一方、ノース・ウェスト・イングランドはイングランドで最も高い山々（スコーフェル峰など）が存在する地域です。イングランドでは、標高600m以上の山を「山」と定義しています。

土地利用と国境

イングランドの総面積は約13万平方キロメートルです。土地利用は、耕作地が約30％、牧草地が約36％、森林が約8％、市街地が約21％を占めています。イングランドはスコットランドとウェールズとのみ陸地国境を持ち、西はアイルランド海、東は北海、南はイギリス海峡を隔てて他の国々と接しています。

経済と地域格差

イングランドは世界有数の経済大国であり、一人当たりGDPは高い水準にあります。混合市場経済を採用し、社会保障制度も整備されています。通貨はポンド（GBP）です。イングランド経済はイギリス経済の大部分を占めていますが、地域間の経済格差は顕著です。ロンドンが最も裕福であり、北部・西部地域は南部・東部地域に比べて経済発展度が低い傾向にあります。EUの経済発展度ランキングにおいても、ロンドンとバークシャー・バッキンガムシャー・オックスフォードシャーの2地域が上位にランクインしています。

政治的地位

かつて独立王国であったイングランドは、スコットランドとの連合を経てイギリスの一部となりました。現在、イングランドはイギリス議会によって代表されますが、イングランド固有の問題はしばしば議論の対象となっています。また、イングランドは欧州議会に議員を派遣しています。

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