インターボロー・ラピッド・トランジット

インターボロー・ラピッド・トランジット（IRT）の歴史と路線網

インターボロー・ラピッド・トランジット（IRT）社は、1903年から1940年までニューヨーク市において地下鉄や高架鉄道などの都市鉄道網を運営した鉄道会社です。ニューヨーク市地下鉄の礎を築いたIRTの歴史と路線網について、詳細に見ていきましょう。

IRTの設立と初期の路線

IRT社は、長年の議論と様々な提案経路を経て、1904年10月27日、シティ・ホール駅から145丁目駅間を結ぶ地下鉄路線を開通させました。これは、既存の高架鉄道網との競争、そして最適な路線計画をめぐる複雑なプロセスを経て実現したものです。

設立の背景には、オーガスト・ベルモント・ジュニアとジョン・マクドナルドによるラピッド・トランジット・コンストラクション社による入札成功があります。1900年に鉄道路線建設権を獲得した彼らは、ニューヨークにおける最初の地下鉄道網建設を目指し、1902年5月6日にIRT社を設立しました。

IRT社は、設立から1年以上前の1903年4月1日には、既存の高架鉄道であるマンハッタン鉄道をリースで傘下に収め、マンハッタンにおける都市鉄道の独占的地位を確立しました。マンハッタン鉄道は、マンハッタン島内4路線とブロンクス区への路線を運営していました。IRTは、地下鉄と高架鉄道を効率的に統合運用しようと試みましたが、後にマンハッタン鉄道の高架線はすべて廃止されています。

拡張と買収

ニューヨーク市の急激な人口増加に対応するため、1913年にはブルックリン・ラピッド・トランジット社と協力し、地下鉄網の拡大のための契約を締結しました。この契約は、ニューヨーク市地下鉄網の拡大に大きく貢献しました。

しかし、1940年6月12日、IRT社はニューヨーク市に買収され、民間企業としての歴史に幕を閉じました。買収後、IRTは、ブルックリン・マンハッタン・トランジット（BMT）社、および市営のインディペンデント・サブウェイ・システムと統合され、現在のニューヨーク市地下鉄となりました。

IRT路線網の現状

現在、IRTの路線網はニューヨーク市地下鉄のAディビジョンとして運営され、「IRTディビジョン」または「Aディビジョン」と呼ばれています。路線は主にマンハッタン島内を地下で走行していますが、ハーレムの125丁目付近には地上区間も存在します。

ブロンクス区の路線は、高架線、地下線、そして旧ニューヨーク・ウェストチェスター・アンド・ボストン鉄道の線路跡を利用した地上区間（IRTダイアー・アベニュー線）から構成されています。ブルックリン区には、地下線と高架線の組み合わせによる路線が複数存在します。

クイーンズ区を走る唯一のIRT路線であるIRTフラッシング線は、大部分が高架線ですが、一部区間は地下を走行します。1942年のIRT2番街線の廃止以降、IRTフラッシング線は他のIRT路線とは直接接続されておらず、クイーンズボロ・プラザ駅でBMTアストリア線と接続しています。

主要路線一覧

IRTが建設した路線は、マンハッタン、ブロンクス、ブルックリン、クイーンズ区に広がっています。以下に主要路線を列挙します。

マンハッタンとブロンクス

IRTレキシントン・アベニュー線: (4, 5, 6, <6>系統) レキシントン・アベニュー、パーク・アベニュー地下、ラファイエット通り、ブロードウェイ地下
IRTブロードウェイ-7番街線: (1, 2, 3系統) ブロードウェイ、7番街地下、ヴァリック通り、ウェスト・ブロードウェイ
IRTフラッシング線: (7, <7>系統) 41丁目、42丁目地下
42丁目シャトル: (S系統) 42丁目地下
IRTレノックス・アベニュー線: (2, 3系統) レノックス・アベニュー、セントラル・パーク地下
IRTホワイト・プレーンズ・ロード線: (2, 5系統) イースト149丁目地下、ホワイトチェスター・アベニュー、サザン・ブールバード、ボストン・ロード、ホワイト・プレーンズ・ロード高架
IRTペラム線: (6, <6>系統) イースト138丁目、サザン・ブールバード地下、ウェストチェスター・アベニュー高架
IRTジェローム・アベニュー線: (4系統) グランド・コンコース地下、リバー・アベニュー、ジェローム・アベニュー高架

ブルックリン

IRTイースタン・パークウェイ線: (2, 3, 4, 5系統) フルトン・ストリート、フラットブッシュ・アベニュー、イースタン・パークウェイ地下
IRTニューロッツ線: (2, 3, 4, 5系統) イースト98丁目、リボニア・アベニュー高架
IRTノストランド・アベニュー線: (2, 5系統) ノストランド・アベニュー地下

クイーンズ

IRTフラッシング線: (7, <7>系統) 50丁目地下、クイーンズ・ブールバード、ルーズベルト・アベニュー高架

イースト川・ハーレム川横断トンネル

IRT路線は、イースト川とハーレム川を複数のトンネルで横断しています。

ジョレールモン・ストリート・トンネル (4, 5系統)
クラーク・ストリート・トンネル (2, 3系統)
スタインウェイ・トンネル (7, <7>系統)
レキシントン・アベニュー・トンネル (4, 5, 6, <6>系統)
149丁目トンネル (2系統)
ブロードウェイ橋 (1系統)

1940年以降の拡張と改良

IRT買収後も、路線網の拡張と改良は続けられています。例えば、IRTダイアー・アベニュー線(1941年開通)、IRTフラッシング線のBMTとの共同運行終了(1949年)、IRTレノックス・アベニュー線の延長(1968年)、IRTブロードウェイ-7番街線サウス・フェリー駅の改良(2009年)、そしてIRTフラッシング線の34丁目-ハドソン・ヤード駅への延伸(2015年)などが挙げられます。

IRTは、現在のニューヨーク市地下鉄の骨格を形成した重要な鉄道会社です。その歴史と路線網は、ニューヨーク市の発展と深く関わっており、現代の地下鉄システムを理解する上で欠かせない存在となっています。

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