インテグラル (宇宙望遠鏡)

インテグラル（INTEGRAL）とは

インテグラル（INTErnational Gamma-Ray Astrophysics Laboratory、INTEGRAL）は、欧州宇宙機関（ESA）が運用するガンマ線観測衛星です。2002年に宇宙からの強い放射線を観測するために打ち上げられ、これまでで最も感度の高いガンマ線観測装置として活躍しています。ESAがロシア連邦宇宙局（FKA）およびアメリカ航空宇宙局（NASA）と共同で進めているミッションであり、謎の「鉄クエーサー」の検出や、ガンマ線バースト、ブラックホールの実在の証拠の調査などで重要な成果を上げています。

ミッションの概要

ガンマ線やX線は大気によって吸収されるため、地上からの観測が困難です。そのため、インテグラルは宇宙空間で直接これらの放射線を観測する役割を担っています。

打ち上げはカザフスタンのバイコヌール宇宙基地から行われ、プロトン-DM2ロケットによって高度700kmまで運ばれました。その後、スラスタを用いて放射線帯を通過し、現在の軌道へと投入されました。

インテグラルの軌道は、周期72時間、近点1万km、遠点15万3000kmの楕円軌道です。近点は地球の磁場内に位置するため、観測は磁場の外で行われます。また、遠点は北半球に位置しており、これにより光が遮られる時間を減らし、地上管制局との通信時間を最大限に確保しています。

運用はドイツのダルムシュタットにある欧州宇宙運用センターで行われ、地上管制局はベルギーのルデュとカリフォルニア州のモハーヴェ砂漠にあります。当初2.2年間の運用予定でしたが、2012年には運用10周年を迎え、その後も観測を続けています。

スペースデブリに関するガイドライン遵守のため、当初は200年かかる予定だった再突入を、2029年になるように2015年1月から2月にかけて軌道制御が4回実施されました。

2020年7月にはスラスターの故障によりセーフモードに突入しましたが、太陽光の圧力を利用する「Z-flip」アルゴリズムを開発し、観測を継続できるようになりました。さらに2021年9月には、シングル・イベント・アップセットと呼ばれる現象により、姿勢制御に問題が発生しましたが、これも復旧されています。

宇宙船の構造

インテグラルの本体にはXMM-Newtonの機体が流用されており、開発費の削減と地上施設との統合が簡素化されています。ただし、ガンマ線とX線に対する耐久性を高めるため、ESAが打ち上げた中で最も重い科学ペイロードとなっています。

機体は複合材で構成され、推進装置にはヒドラジンの単元推進装置が用いられています。姿勢制御は恒星追跡装置、太陽センサ、モーメンタム・ホイールによって行われます。太陽電池パネルは広げると16mになり、2.4kWの電力を供給します。

ペイロード部分も複合材で構成されており、剛体基礎が検出器を支え、H字型の構造が検出器から約4m離れた符号化マスクを支えています。ペイロードは本体とは別に製造、試験が行われ、費用削減に貢献しています。

搭載装置

インテグラルには、複数の帯域で観測を行うための4つの主要な装置が搭載されています。

IBIS (Imager on-Board the INTEGRAL Satellite): 15keVから10MeVの範囲を観測する撮像装置です。デコンボリューションによって1分の分解能を実現しています。
SPI (SPectrometer for INTEGRAL): 20keVから8MeVの放射線を観測する分光計です。六角形のタングステンタイルで構成された符号化マスクと、19個のゲルマニウム結晶を備えています。
SPI ACS (AntiCoincidence Shield): IBISとSPIの背景放射を抑制する装置です。マスクシールドと検出器シールドで構成され、二次放射を吸収します。
JEM-X (Joint European X-Ray Monitor): 3から35keVのX線を観測する装置で、観測対象の詳細な情報を提供します。
OMC (Optical Monitor): 500から850ナノメートルの可視光を観測し、明るい天体の活動を記録します。
IREM (INTEGRAL Radiation Environment Monitor): 軌道上の放射線環境を監視し、較正を行うための装置です。

過去のトラブルと復旧

2020年7月にはスラスターが使用不能になりセーフモードに突入しましたが、「Z-flip」アルゴリズムの開発により復旧しました。

2021年9月には、シングル・イベント・アップセットによる姿勢制御のトラブルが発生しましたが、これも復旧しました。

まとめ

インテグラルは、その高感度な観測装置と長年の運用を通じて、ガンマ線天文学において数多くの重要な発見をしました。現在も観測を続けながら、宇宙の謎の解明に貢献しています。

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