インディアン・ストリーム共和国

インディアン・ストリーム共和国

インディアン・ストリーム共和国は、北アメリカの国境地域に位置した小規模な立憲共和国であり、1832年7月9日から1835年までの短期間で存在しました。この国はアメリカ合衆国のニューハンプシャー州とカナダのケベック州の境界に広がり、正式にはどの国からも認識されることはありませんでした。その名は周辺の小河川、インディアン・ストリームに由来します。国民は約300人で、選挙で選ばれた政府を持ち、独自の憲法も制定されていました。

歴史的背景

この地域は、イギリス国王からではなく、インディアンの首長フィリップから与えられた土地の特許に基づいて開発されました。フィリップは1670年代にニューイングランドを襲ったインディアンの首長であり、その名が地名に使用されています。土地特許の売却後、競合する土地投機会社がこの地域の権利を主張し、複雑な境界線の問題が発生します。アメリカ独立戦争以降、これらの会社はその権利を巡って土地を測量し、開拓者に特許を発行しましたが、境界は曖昧でした。

アメリカとカナダの国境が不明確であったため、インディアン・ストリーム共和国が成立しました。具体的には、1783年のパリ条約で定義された「コネチカット川の北西端の水源」がどこかという解釈の違いが影響していました。この地域はコネチカット湖沼群を含み、イギリスとアメリカがそれぞれ異なる主張をしていました。

両国がここに収税吏や負債徴集保安官を送り込んだため、住民の不満が高まり、インディアン・ストリーム共和国が設立される運びとなりました。

共和国の設立と終焉

インディアン・ストリーム共和国は、問題を解決するための一時的な組織として機能しましたが、1835年にはその政府がアメリカ合衆国への併合を承認しました。この決定の背景には、カナダの債務者刑務所に投獄された国民を解放するために行動した住民たちから生じた外交的緊張がありました。このため、イギリスとアメリカの間で国境問題についての迅速な交渉が必要とされました。

1836年1月には、イギリスが共和国に対する支配権を放棄し、その後アメリカの支配が確認されました。この地域は1840年の国勢調査で「インディアン・ストリーム」として記載されており、当時の人口は315人でした。最終的には、この地域は1840年にピッツバーグ町に組み込まれ、1842年のウェブスター＝アッシュバートン条約によって正式にニューハンプシャー州に併合されました。

このように、インディアン・ストリーム共和国は、国境問題を背景にした歴史的な実験であり、短命であったものの、北アメリカの地図に名を刻んだ独自の歴史を有する存在です。

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