インデックスカタログ

インデックスカタログ (IC) とは

インデックスカタログ（Index Catalogue、通称IC）は、19世紀後半から20世紀初頭にかけて活躍した天文学者ジョン・ドライヤーによって編纂された、星団、星雲、そして銀河といった深宇宙天体を多数収載した重要な天体カタログです。

このカタログは、ドライヤー自身がそれ以前に編纂した権威あるカタログ「ニュージェネラルカタログ（New General Catalogue of Nebulae and Clusters of Stars、略称NGC）」の情報を補完し、新たに見つかった天体を網羅する目的で作成されました。

誕生の経緯と構成

インデックスカタログは、二つのパートに分けて発表されています。

1. インデックスカタログ (IC): 最初に1894年に発表されたリストです。この第一部には、1,529個の天体が収められています。
2. セカンドインデックスカタログ (2IC): 続いて1908年に発表された第二部です。こちらには、さらに3,857個の天体が追加され、合計で多くの新しい天体がカタログ化されました。

通常、これら二つのパートをまとめて単に「インデックスカタログ（IC）」と呼びます。しかし、特に区別が必要な場合は、それぞれをICと2ICと区別して呼ぶこともあります。

カタログの特徴

ICに収載された天体は、NGCカタログと同様の形式で整理されています。それぞれのパート内で独立して、天体の位置を示す1860年の座標系を基準とした赤経（天球上の東西方向の位置）の順に並べられています。

特に、1908年に発表された第二部（2IC）が編纂された時期は、天体写真を用いた観測技術が飛躍的に発展し始めた頃と重なります。この新しい観測手段のおかげで、従来は捉えることが難しかった、より暗く微かな天体、特に等級の低い銀河などが数多く発見され、2ICに収載されることになりました。

また、2ICでは、天体の位置を示す座標として、基準となる1860年分点に加え、1900年分点に基づいた赤道座標も併記されている点が特徴の一つです。

現代への継承

インデックスカタログに収められた貴重な天体情報は、現代の天体観測や研究においても活用され続けています。例えば、1988年に編纂された「NGC 2000.0カタログ」には、ICおよび2ICに収載された全ての天体が含まれており、それらの天体位置は、最新の2000年分点に正確に変換されて記録されています。

主なIC天体

インデックスカタログには、様々な種類や特徴を持つ天体が収められています。その中から、特に有名なものをいくつかご紹介します。

IC 349: おうし座に位置する散光星雲。特に、有名な星団であるプレアデス星団のおうし座23番星の周辺に見られる反射星雲です。
IC 405: ぎょしゃ座にある散光星雲で、「マガタマ星雲」という愛称でも知られています。
IC 434: オリオン座に広がる散光星雲。有名な「馬頭星雲」の背景に広がる明るい星雲として観測されます。
IC 443: ふたご座に見られる天体で、過去に超新星爆発を起こした際の残骸（超新星残骸）です。「くらげ星雲」とも呼ばれます。
IC 1101: しし座銀河団の中心にある巨大な楕円銀河。既知の銀河の中では非常に規模が大きいことで知られています。
IC 1318: はくちょう座の領域にある散光星雲。特に、はくちょう座の中央にある明るい星、γ星（サドル）の付近に広がっています。
IC 1396: ケフェウス座の散光星雲。ガーネット・スターとして知られる変光星、μ星の近くに位置しています。
IC 1805: カシオペア座の散光星雲。有名な二重星団（h+χ Persei）の近くにある、ハートのような形に見える星雲です。
IC 1848: IC 1805と同様、カシオペア座にある散光星雲で、二重星団の近くに位置します。IC 1805と合わせて観測されることが多い天体です。
IC 2177: いっかくじゅう座に見られる散光星雲。「ワシ星雲」という愛称で親しまれています。
IC 2602: りゅうこつ座にある散開星団。南天で見られる散開星団の中では特に明るく、「南天のプレアデス」と呼ばれることもあります。
IC 2944: ケンタウルス座の散光星雲。美しく輝く星形成領域として知られています。
IC 4606: さそり座に位置する散光星雲。特に、明るい恒星アンタレスの周辺に広がる反射星雲として観測されます。
IC 5067-5070: はくちょう座の散光星雲。鳥のペリカンのような形に見えることから、「ペリカン星雲」と呼ばれています。
* IC 5146: はくちょう座の散光星雲。「まゆ星雲」という愛称を持つ、若い星々が生まれつつある領域です。

これらの天体は、ICカタログが網羅する数々の宇宙の驚異のごく一部に過ぎません。ICは、過去の観測の蓄積と、天体写真という新しい技術によって拡大された、宇宙への理解を深めるための貴重な資料となっています。

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