イントロデューシング・リー・モーガン

『イントロデューシング・リー・モーガン』：若き巨星の萌芽

『イントロデューシング・リー・モーガン』（Introducing Lee Morgan）は、ジャズ界に彗星のごとく現れたトランペット奏者、リー・モーガンが1956年に録音し、翌1957年にサヴォイ・レコードからリリースしたスタジオ録音盤です。

彼の輝かしいキャリアにおいて、サヴォイ・レコードから発表されたリーダー作品はこの一枚のみという点でも特筆すべきアルバムです。当時まだ18歳という若さであったモーガンの、瑞々しくも力強い演奏を捉えた貴重な記録となっています。

制作背景と共演者たち

本作の録音は、彼が契約を結んだ名門レーベル、ブルーノートからの記念すべきリーダー・デビュー作『インディード!』（Indeed!）のレコーディングを終えたまさにその翌日に行われました。多作で知られるモーガンの当時の勢いを示すエピソードと言えるでしょう。

セッションを共にしたのは、テナー・サクソフォニストのハンク・モブレー率いるカルテットという強力な布陣でした。モブレー自身が作曲したオープニング・トラック「ハンクス・シャウト」をはじめ、彼の手腕が随所に光っています。リズムセクションは、ピアノにハンク・ジョーンズ、ベースにダグ・ワトキンス、ドラムスにアート・テイラーという、当時のシーンを支えた名手たちが固めており、若きモーガンのプレイを堅固にバックアップしています。

収録曲とその特徴

アルバムは全7曲で構成されています。ファッツ・ナヴァロの「ノスタルジア」やダグ・ワトキンスの「ベット」といったナンバーに加え、スタンダード曲も含まれています。

特に注目すべきは、「朝日のようにさわやかに」（Softly, as in a Morning Sunrise）から始まる一連のトラックです。この楽曲に続き、「P.S.アイ・ラブ・ユー」「イージー・リビング」「ザッツ・オール」の計4曲が、メドレー形式でノンストップで録音されました。しかし、このメドレーにおいてモーガンのトランペットがソロイストとしてフィーチャーされているのは、「P.S.アイ・ラブ・ユー」のみとなっています。この構成は、モブレーのリーダーシップによる録音セッションの特色を反映しているとも考えられます。

評価と若き才能の片鱗

本作は、音楽評論家からの評価も得ています。例えば、オールミュージックのスコット・ヤナウは、このアルバムに5点満点中3.5点を与えています。彼のレビューでは、当時のモーガンが自身のアイドルであったクリフォード・ブラウンから強い影響を受けていたことを認めつつも、既に彼自身の持つ輝かしい個性や将来性を感じさせるプレイを随所に見せている、と高く評価しています。

18歳という若さで、これほどまでに力強く、そして情感豊かな演奏を聴かせている事実は驚嘆に値します。クリフォード・ブラウンの影響下から徐々に自己のスタイルを確立していく過程にある、まさにその瞬間のモーガンの姿が、このアルバムには刻み込まれています。

まとめ

『イントロデューシング・リー・モーガン』は、リー・モーガンの初期のディスコグラフィにおいて、サヴォイ・レコードからの唯一のリーダー作という点で特別な位置を占めています。ブルーノート契約直後の勢いそのままに、ハンク・モブレー率いる実力派メンバーと共演した本作は、若きトランペット奏者がその並外れた才能の片鱗を既に示していたことを証明する、貴重なドキュメントと言えるでしょう。彼のファンはもとより、モダン・ジャズの歴史をたどる上でも聴き逃せない一枚です。

収録曲リスト:

1. ハンクス・シャウト
2. ノスタルジア
3. ベット
4. 朝日のようにさわやかに
5. P.S.アイ・ラブ・ユー
6. イージー・リビング
7. ザッツ・オール

参加ミュージシャン:

リー・モーガン（トランペット）
ハンク・モブレー（テナー・サクソフォーン）
ハンク・ジョーンズ（ピアノ）
ダグ・ワトキンス（ベース）
* アート・テイラー（ドラムス）

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