インドゥアン

インドゥアン期の概要

インドゥアン（英語: Induan）は、前期三畳紀に位置する地質時代で、約2億5190万年前から2億5120万年前までの期間を指します。地質学的には、オレネキアンと関連付けられることが多く、その名はインダス川盆地にちなみます。日本語では、さまざまな呼称（如インダス期、インドュアンなど）が存在しますが、インドゥアン期および階の用語には重要な違いがあります。特に、「階」という言葉は地層を示す単位であり、地質時代を示す単語と対になっているため注意が必要です。

層序学での位置づけ

かつて西洋の層序学者たちは「スキタイ階」という用語を使っていましたが、1956年にはロシアの層序学者による研究により、スキタイ階はインドゥアン階およびオレネキアン階に細分されました。また、前期インドゥアンに相当する時代には、カナダのアクセルハイバーグ島北西部に位置するグリースバキアン期があり、後期インドゥアンはヒマラヤを模式地とするナンマリアン期に関連していました。しかし、ナンマリアン期と呼ばれる名称は現在ではあまり使用されていません。

このインドゥアン階の基底は、コノドントの種であるHindeodus parvusが初めて化石記録に現れる地点として定義されています。また、インドゥアン階の国際標準模式層断面（GSSP）は、中国の長興県に位置しています。

生物相と生態系の変化

インドゥアン期はペルム紀末の大量絶滅の後に続く時代であり、この期間にあたる生物多様性は全般的に低い状態が続きました。特にパンゲアの大部分では生物が少なく、砂漠化した高温・乾燥の環境が広がっていました。高緯度地域では、グリースバキアン亜期に裸子植物が優勢であったものの、ディーネリアン亜期に入るとプレウロメイアなどのヒカゲノカズラ綱が支配するようになりました。この環境変化は、気候が冷涼かつ乾燥から温暖で湿潤に変わることを示しています。

この期間、生物にとって多くの困難が待ち受けていました。特に、ペルム紀末に繁栄していたグロッソプテリスは絶滅し、インドゥアン期の陸上動物群も少数派となりました。主にリストロサウルス科やプロテロスクス科が優勢であり、他の動物、たとえばアンモナイトや昆虫、四肢動物などは非常に希少でした。特に3000万年という長い期間、彼らの存在は証明されていません。

海洋環境もまた厳しく、酸素に乏しい状態が続きました。この現象は、特にディーネリアン亜期で目立つもので、海洋内ではマイクロバイアライトの礁が目立つ存在となりました。これが示すのは、おそらく過去の大量絶滅によって造礁性の生物との競争が消えた結果、こういった礁が形成されたということです。

生物の多様性と分布

一方で、条鰭綱は前期の大量絶滅の影響をほとんど受けず、多くの属はインドゥアン期からオレネキアン期にかけて広く分布しました。例えば、アファネランマやワントゾサウルスのような、ワニに似た姿を持つ分椎目の両生類は、この時代に幅広い地域に生息しており、化石はグリーンランドやスピッツベルゲン島、パキスタン、マダガスカルなどで発見されています。また、二枚貝の一種であるクラライア属は、パンサラッサ海やテチス海に広く分布・繁栄し、最古のカキとして知られるリオストレア属も同様に、この期から確認されています。

インドゥアン期の生物相や環境は、時代の特徴を形成する重要な要素であり、後世の生態系に多くの影響を及ぼしました。

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