テチス海

テチス海：かつて存在した巨大な海洋

テチス海（Tethys Ocean, Tethys Sea）は、約2億年前から新生代第三紀にかけて存在した広大な海洋です。古地中海とも呼ばれ、その歴史は地球のダイナミックな変動と密接に結びついています。

テチス海の誕生と変遷

テチス海は、パンゲア大陸の分裂とともに誕生しました。当初、ローラシア大陸とゴンドワナ大陸という二つの巨大な大陸に挟まれた海域として存在し、現在の地中海周辺から中央アジア、ヒマラヤ、東南アジアにまで広がる広大な海でした。西側にはカリブ海にまで広がっていたと考えられています。

テチス海の歴史は古く、その起源は3億9000万年前のデボン紀にまで遡るとされています。この時代のテチス海は「古テチス海（Paleo-Tethys Ocean）」と呼ばれています。その後、パンゲア大陸の形成に伴い、古テチス海は内海化しますが、パンゲア大陸の分裂とともに再び広がり、新たなテチス海が誕生しました。

その後、ゴンドワナ大陸からアフリカ大陸とインド大陸が分離し、北上を開始。インド大陸がユーラシア大陸に衝突したことでヒマラヤ山脈が形成され、アフリカ大陸とユーラシア大陸が接近したことでテチス海は消滅しました。現在、カスピ海、黒海、アラル海はテチス海の名残であると考えられています。

テチス海の発見と命名

テチス海の存在は、アルプスやアフリカ大陸で化石調査を行っていたエドアルト・ジュースによって1893年に提唱されました。テチス海という名前は、ギリシア神話に登場する海の女神テーテュース（Tethys）に由来しています。

テチス海が地球に与えた影響

テチス海は、その存在によって地球の気候や地質に大きな影響を与えました。当時、テチス海は赤道上に位置していたため、赤道海流が活発に流れていました。この海流は、地球の気候を温暖化させ、現在の地球よりも温暖な時代であったと推定されています。

また、テチス海には温暖な気候の下で植物プランクトンが大量に繁殖し、その死骸が海底に堆積しました。これらの堆積物が、中東地域に存在する膨大な石油資源の源になったと考えられています。

テチス海の地質学的証拠

テチス海が存在した証拠は、地質学的にも数多く発見されています。例えば、ヒマラヤ山脈には、海底の堆積物と思われる地層が激しく褶曲した露頭があり、そこからはアンモナイトの化石が多数発見されています。これらの証拠は、かつてこの場所に海が存在したことを物語っています。

関連情報

テチス海に関連する情報として、以下の項目も参照してください。

プレートテクトニクス: テチス海の形成と消滅は、プレートの移動によって引き起こされました。
ワディ・アル・ヒタン: エジプトにある化石遺跡で、テチス海に生息していたクジラの化石が発見されています。
エドアルト・ジュース: テチス海を提唱した地質学者。
テティス獣類: テチス海周辺に生息していたとされる絶滅した哺乳類。

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