インド発祥の宗教

インド宗教の概観

インド発祥の宗教、いわゆるインド宗教は、古代インドの聖典であるヴェーダに起源を持ちます。このため、伝統的にはヴェーダの宗教、またはヴェーダ教という名称でも知られています。特にバラモン教は、祭祀を執り行うバラモン階級の宗教として理解され、ヴェーダの宗教という言い方はあまり使われていません。バラモン教が一般的に広く認知される一方で、ヒンドゥー教はそれを含むより幅広い概念として存在しています。

ヒンドゥー教とその歴史

ヒンドゥー教（Hinduism）は、最も広義にはインドに存在したあらゆる宗教や文化的伝統をあわせて指す言葉です。これは先史文明であるインダス文明にも遡り、アーリア人がインドに定住してからの歴史を反映しています。イギリスの歴史家たちは、バラモン中心の宗教をバラモン教、ヴェーダ時代の思想をヴェーダの宗教と呼ぶことが多いです。

フラウリーとマルホトラは、インドの様々な宗教が有する共通の特徴を示すために「ダルマの伝統」という用語を用いています。彼らによると「すべてのインドの宗教はダルマと呼ばれる」とのことであり、このことからインドの宗教群をダルマの宗教（Dharmic religions）とも称することができます。しかし、この概念にはいくつかの批判も存在しています。

バラモン教からヒンドゥー教へ

バラモン教は、約4世紀頃に民間信仰を取り込み、ヒンドゥー教へと進化しました。バラモン教では、神に等しい存在として司祭階級が理想とされ、彼らは宇宙の根本原理であるブラフマンと同一視されます。しかし、1世紀から3世紀にかけて仏教の影響でバラモン教が衰退した後、4世紀頃に再構成が行われ、ヒンドゥー教が生まれました。この過程で主神たちもシヴァやヴィシュヌなどに移行しています。

シヴァには1000もの別名があり、ヴィシュヌには十の化身があります。こうした神々の多様性は民族宗教の影響を受けた痕跡であると言えるでしょう。

アンチ・バラモンの新宗教

紀元前5世紀頃、仏教やジャイナ教など、バラモン教に対抗する新たな宗教が生まれました。特に仏教は、バラモン教の根本的な教義であるカースト制度を否定し、すべての人々が平等であることを訴えました。ただし、仏教の普及過程でバラモン教の神々が取り込まれることもありました。

ジャイナ教の開祖マハーヴィーラもまた、24人のティールタンカラの一人として知られ、彼の教えはバラモン教からの独立を宣言したとも言われています。

現存するインドの宗教

現在、バラモン教やヒンドゥー教、仏教、ジャイナ教などがインド国内に根付いており、宗教的多様性が見られます。特に、ヒンドゥー教はその元となったバラモン教や外部の影響を受けながらも、長きにわたりインド文化の中心的な役割を果たしてきました。シク教やアイヤーヴァリといった新しい宗教の形成も、インドの宗教的多様性を示しています。

このように、インド宗教はその起源や歴史的背景により非常に多様であり、今なお進化し続けています。

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