インド鉄道WCM3形電気機関車

インド鉄道WCM3形電気機関車

概要

インド鉄道WCM3形電気機関車は、日立製作所がインド鉄道向けに製造した直流電気機関車です。日本における第二次世界大戦後の初の輸出電機関車として位置付けられており、WCM-3形とも表記されます。この機関車は、インドの鉄道ネットワークにおける重要な役割を果たしてきました。

インドでの鉄道の電化は1925年のボンベイ（現：ムンバイ）都市圏での直流1,500 V電化から始まりました。その後、1958年にはカルカッタ（現：コルカタ）地域で直流3,000 Vの電化が行われ、WCM3形が製造されることになりました。それまで使用されていた電気機関車はイギリス製でしたが、WCM3形は日本の技術に基づき製造されました。

機器と構造

WCM3形は、特徴的なボンネット型の箱型車体を有し、側面には3つの窓があります。機関車内部には、電動機や抵抗器が設置されており、送風機付きの電動発電機を使用することで、室内のホコリの侵入を防ぐ工夫がなされています。台車はイコライザー式の3軸ボギー台車が2つ搭載されており、急カーブを安全に通過するように設計されています。

ほとんどの部品は日立製ですが、軸受はイギリスのテムケン社によるローラーベアリングが使われています。また、制動装置もウェスチングハウス製のもので、機関車単体では真空ブレーキを、連結する客車や貨車には空気ブレーキが使用されます。

主電動機は、当時の日本製主電動機の中で最大出力となる600 HP・800 rpmのHS-373-Arを採用しており、急行旅客列車から貨物列車まで多様な運用が可能です。形式名「WCM」は、「広軌（W）」「直流（C）」「貨客両用（M）」の略です。

運用と廃車

WCM3形は1958年に導入され、最初はカルカッタの直流電化路線で活躍しました。後にボンベイの直流1,500 V電化区間へ移籍し、降圧工事が行われました。その後は小運転や入れ換え作業用に使用されていましたが、2014年には全車両が廃止され、解体されました。これは、この機関車がインドの鉄道史において重要な役割を果たした証でもあります。

関連項目

WCM3形の後継機として、日立製作所によって製造されたWCM4形も存在します。これにより、日立の鉄道技術が継承され、新たな電気機関車の登場が期待されました。

参考資料

• - 石田周二、笠井健次郎『交通ブックス 124 電気機関車とディーゼル機関車』成山堂書店、2015年6月。ISBN 978-4-425-76231-6。
• - 日立製作所 (1958年7月). “日立評論1958年7月号:DC 3,000V 3,600HP 電気機関車” (PDF).

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