インネレシュタット (ウィーン)

インネレシュタット：ウィーンの歴史と文化が息づく中心地

インネレシュタットは、オーストリアの首都ウィーンの第1区であり、まさにこの都市の心臓部と言える場所です。ここはウィーン旧市街にあたり、歴史的な建造物や文化施設が集中しています。1850年までは、この地域がそのままウィーン市を指していました。かつてのインネレシュタットは、シュトゥーベンフィアテル、ケルントナー・フィアテル、ヴィドマーフィアテル、ショッテンフィアテルの4つの地区に分かれており、それぞれ城壁の門に由来する名前が付けられていました。

地理

インネレシュタットはウィーン市の中心に位置し、周辺の区と複雑に入り組んだ境界線を持ちます。北西は2区レオポルトシュタット、東は3区ラントシュトラーセ、南は4区ヴィーデンと6区マリアヒルフ、西は7区ノイバウと8区ヨーゼフシュタット、北は9区アルザーグルントと接しています。これらの区との境界は、ウラニア、ウィーン川、ロートリンガー通り、カール広場、ゲトライデ市場、美術館広場、美術館通り、アウアースペルク通り、地方裁判所通り、大学通り、マリア＝テレジア通り、そしてドナウ運河によって区切られています。さらにインネレシュタットは、統計上の小地域である「ツェールベツィルク」に分けられ、アルトシュタット＝オスト、シュトゥーベンフィアテル、オーパーンフィアテル、レギーアルングスフィアテル、ベルゼフィアテル、アルトシュタット＝ヴェスト、アルトシュタット＝ミッテの7つの地域から構成されています。

歴史

インネレシュタットの歴史は、ケルト人が築いた集落がローマ人の要塞ウィンドボナとなった時代まで遡ります。その後、長らくウィーンの歴史はインネレシュタットの歴史と重なっていました。1850年に周辺の町が合併し、近代的なウィーン市が誕生したことで、インネレシュタットはその一部となりました。しかし、その後も政治、経済、文化の中心としての地位は揺るぎないものです。

人口

1869年には約68,000人が居住していましたが、1880年の約73,000人をピークに人口は減少し、2011年には約16,000人と、23区中最も人口が少ない区となっています。住民の高齢化が進んでおり、60歳以上の割合はウィーン市全体の平均よりも高くなっています。一方、15歳未満の割合は低く、女性の比率は平均よりも高い傾向にあります。外国籍を持つ住民の割合は、ウィーン市全体と比べてわずかに低いですが、様々な言語が飛び交い、多様な文化が共存しています。宗教的には、ローマ・カトリック信者が最も多いですが、無宗教の人々も少なくありません。

政治

インネレシュタットでは、オーストリア国民党が長年にわたり区長を輩出してきましたが、近年はオーストリア社会民主党が勢いを増しています。選挙では国民党が支持を維持しつつも、社会民主党や緑の党が支持を広げ、激しい選挙戦が繰り広げられています。2005年の選挙では、国民党が区長候補を立て替え、社会民主党の猛追をかわし勝利を収めました。

紋章

インネレシュタットの紋章は、赤地に白の十字がデザインされており、ウィーン市および連邦州としてのウィーンの紋章と共通です。この紋章は、13世紀の硬貨に描かれたデザインにルーツを持つと考えられており、中世のローマ王部隊の軍旗にまで遡る可能性も指摘されています。

文化・見どころ

インネレシュタットには、歴史と文化を感じさせる見どころが満載です。観光地としては、シュテファン大聖堂、ホーフブルク宮殿、ウィーン国立歌劇場、ブルク劇場、ウィーン楽友協会、ウィーン市庁舎、国会議事堂などが有名です。また、ヴィルギル礼拝堂、ペスト記念塔、ミノリーテン教会、ペーター教会、ルプレヒト教会、シュッテン修道院、マリア・アム・ゲシュターデ教会、アム・ホーフ広場、ホーアーマルクト広場、ユーデンプラッツ、ノイアーマルクト広場のドナーブルンネン（噴水）、シェーンラテルン通りとバジリスクハウス、イエズス会教会などの歴史的な建造物も点在しています。さらに、旧市街の周囲を囲んでいた城壁の跡地にできた環状道路リングシュトラーセも、インネレシュタットの一部です。ウィーン唯一のシナゴーグであるザイテンシュテッテン通りの市民神殿は、1938年の「水晶の夜」を生き残った貴重な存在です。

美術館・博物館

インネレシュタットには、60以上の美術館や博物館があります。アルベルティーナ美術館は、ウィーンで2番目に多い来場者数を誇り、65,000点の絵画と1,000,000点以上の版画を所蔵しています。ホーフブルク宮殿では、ハプスブルク家の生活を垣間見ることができます。また、ウィーン美術史美術館やウィーン自然史博物館は、ハプスブルク家のコレクションを基にした有名な博物館です。セセッション館、ウィーン・キュンストラーハウス、オーストリア銀行美術フォーラム、造形芸術アカデミーの絵画ギャラリー、オーストリア国立図書館内パピルス博物館なども芸術愛好家には見逃せない場所です。その他、ユダヤ博物館やウィーン民族学博物館など、様々なテーマの博物館があります。さらに、時計博物館やテディベア博物館のようなユニークな博物館も楽しめます。

参考文献

Ernst Grabovszki: Innere Stadt, Wien, 1. Bezirk. Verlag Sutton, Erfurt 2002, ISBN 3-89702-467-5
Ingeborg Gaisbauer: Wien I, Tuchlauben 17: Baustrukturabfolge und keramisches Fundamterial von der Römerzeit bis zum späten Mittelalter. Diplom-Arbeit, Universität Wien, 2002
Elisabeth Lichtenberger: Die Wiener Altstadt: von der mittelalterlichen Bürgerstadt zur City. Deuticke, Wien 1971, ISBN 3-7005-4428-6
Henriette Mandl: Wiener Altstadt-Spaziergänge. Ueberreuter, Wien 1987, ISBN 3-8000-3238-4
Manfred Wehdorn: Wien. Das historische Zentrum: Weltkulturerbe der UNESCO. Springer, Wien 2004, ISBN 3-211-20157-2

関連項目

ウィーン歴史地区

外部リンク

* ウィーン歴史地区の世界遺産への登録について (UNESCO)（英語・フランス語）

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