インノケンティ・スモクトゥノフスキー

インノケンティ・スモクトゥノフスキー：ソ連の演技の巨星

インノケンティ・スモクトゥノフスキー（1925年3月28日 - 1994年8月3日）は、ソビエト連邦の劇場及び映画界で圧倒的な存在感を示した俳優であり、「ソビエト俳優の王」と称された彼の名声と演技力は、今なお多くの人々に記憶されている。彼は1974年にソ連人民芸術家に選出され、1990年には社会主義労働英雄となった。

生い立ち

スモクトゥノフスキーは、シベリアの寒村でベラルーシの農民夫婦の子として誕生した。彼の家系にはポーランド人のルーツがあるとされていたが、本人は農民の家系で貴族的な血筋ではないと声明を出している。第二次世界大戦中、彼は赤軍に参加し、戦争を経験。その後、1946年にクラスノヤルスクの劇場でキャリアをスタートし、最終的にはモスクワの劇場に移った。

舞台での活躍

1957年、スモクトゥノフスキーはレニングラードのボリショイ・ドラマ劇場に招かれ、ドストエフスキーの『白痴』でムイシュキン公爵役を演じる。この演技は彼にとって大きな転機となり、観客を魅了した。また、彼の演技力が存分に発揮された作品として、トルストイの『皇帝フョードル・イワノヴィチ』も挙げられる。彼はこの舞台で見事な表現力を披露し、演劇界での地位を確立した。

映画界での活躍

スモクトゥノフスキーの映画デビュー作は、1962年公開のミハイル・ロンム監督の『ナイン・デイズ・イン・ワン・イヤー』である。その後、1964年にはグリゴーリ・コージンツェフ監督による『ハムレット』に出演し、英俳優ローレンス・オリヴィエから高く評価された。彼の演技には男らしさと繊細さが融合され、複雑なキャラクターを表現する能力が際立っていた。この役で彼はレーニン賞を受賞し、英国の評論家たちからも賛辞を受けた。

喜劇的な才能もあり、エルダー・リャザノフ監督の『ビウェア・オブ・ザ・カー』では主人公のユーリー・デトチキン役を演じ、その存在感を世に知らしめた。その他にも、ピョートル・イリイチ・チャイコフスキーを演じた『チャイコフスキー』、アンドレイ・コンチャロフスキー監督の『ワーニャ伯父さん』など、多くの名作に出演し続けた。

また、アンドレイ・タルコフスキーの『鏡』ではナレーターとしての役割を果たし、さまざまな役柄に挑戦することで学問的、文化的な価値も高めた。1977年の『オン・サーズデー・アンド・ネバー・アゲイン』や1979年の『リトル・トラジェディーズ』などでも多面的な演技を見せ、彼のスキルは幅広いジャンルで評価される。

1990年にはニカ賞の最優秀俳優賞を受賞し、映画界での彼の貢献を認められた。スモクトゥノフスキーは1994年に69歳で他界するが、彼に因んだ小惑星「4926 スモクトゥノフスキー」が命名されるなど、彼の名声は宇宙にまで広がっている。彼の人生とキャリアは、今なお多くの人に影響を与えており、演劇と映画の世界における偉大な伝説である。

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