インヴァロッヒーの戦い (1645年)

インヴァロッヒーの戦い：スコットランド内戦の激戦

1645年2月2日、スコットランド西部のフォート・ウィリアム近郊、インヴァロッヒーで激しい戦いが繰り広げられました。この戦いは、イングランド内戦と連動して勃発したスコットランド内戦における重要な局面であり、王党派のモントローズ侯爵ジェイムズ・グラハムが、親議会派の国民盟約軍を破るという劇的な勝利を収めたことで知られています。

戦いの背景：スコットランド内戦の勃発

スコットランドでは、宗教政策を巡り、長老制を重視する国民盟約（盟約派）と、監督制を押し付けようとするチャールズ1世との間で対立が深まっていました。主教戦争を経て一時和睦したものの、チャールズ1世への忠誠を誓うモントローズ侯と、国王の干渉を排除しようとするアーガイル侯爵アーチボルド・キャンベルの間で、意見の対立が先鋭化します。アーガイル侯はイングランド議会派と同盟を結び、チャールズ1世と対立。一方、モントローズ侯はチャールズ1世に忠誠を誓い、盟約派を打倒すべく立ち上がったのです。

モントローズ侯の進軍

1644年、モントローズ侯はアイルランドのアントリム伯ランダル・マクドネルとアラスデア・マッコーラと手を組み、反乱を起こします。イングランド北部で徴兵を行った後、スコットランドへ侵攻。盟約派の鎮圧軍によって王党派の合流は阻止され、一度はカーライルへ退却したモントローズ侯ですが、アイルランドからの援軍を得て再びスコットランドへ。変装して隠密に北上し、ブレア・アソルでアイルランド軍と合流しました。

モントローズ侯は少ない兵力ながらも、テイパミュアの戦いで盟約派に勝利し、勢いに乗って北上。アバディーンを占領し略奪するなど、盟約派を翻弄しました。冬の山越えを経てスコットランド西部のアーガイル・アンド・ビュートに現れると、盟約派は動揺。特に本拠地を略奪されたアーガイル侯はモントローズ侯を討伐すべく出兵しますが、モントローズ侯はこれを出し抜き、ネス湖付近でハイランド地方の氏族を味方につけました。そして、インヴァロッヒーに留まるアーガイル侯との決戦に臨んだのです。

インヴァロッヒーの戦いの詳細

モントローズ侯の軍は丘の上に陣を構え、アーガイル侯の軍は山麓のインヴァロッヒーにいました。戦いの直前、アーガイル侯は肩を脱臼したため、指揮をダンカン・キャンベル・オブ・オーチンブレックに委ねました。オーチンブレックは中央に大砲を備えたキャンベル氏族の兵を、左右にローランド地方の兵を配置しました。一方、モントローズ侯はハイランド地方の兵を中央、アイルランド兵を右翼、左翼に配置しました。

2月2日の夜明け前、戦闘が開始されました。アイルランド兵が敵の両翼に攻撃を仕掛け、ローランド兵を混乱に陥れると、キャンベル兵に反撃を命じたオーチンブレックに対し、モントローズ侯のハイランド兵が先んじて攻撃を仕掛けました。全面衝突となった頃合いで、モントローズ侯の騎兵隊が側面から背後へ回り込み、敵の退路を遮断。包囲された盟約派の軍は総崩れとなり、オーチンブレックは捕らえられ、アーガイル侯は湖に逃れました。盟約派は1500人もの死者を出す大敗を喫しました。

戦後：王党派の勢力拡大

勝利を収めたモントローズ侯は、チャールズ1世に手紙を送り、王党派の完全勝利まで和平を拒否し、援軍を率いて王を助けることを誓いました。その後、王党派の支持を増やすための軍事活動を再開。ハントリー侯の息子ジョージ・ゴードン卿の軍勢を加え、東へ転戦しました。一方、アーガイル侯はエディンバラへ退却し、スコットランド身分委員会はモントローズ侯をお尋ね者としましたが、実効性はなく、モントローズ侯はその後もゲリラ戦術を用いて盟約派を翻弄し続けました。

インヴァロッヒーの戦いは、スコットランド内戦における王党派の勢力を大きく拡大させた重要な戦いであり、モントローズ侯の軍事的才能を強く印象づけた出来事でした。


参考文献

ナイジェル・トランター著、杉本優訳『スコットランド物語』大修館書店、1997年。
松村赳・富田虎男編『英米史辞典』研究社、2000年。
* シセリー・ヴェロニカ・ウェッジウッド著、瀬原義生訳『イギリス・ピューリタン革命―王の戦争―』文理閣、2015年。

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