国民盟約

国民盟約（ナショナル・カヴェナント）とは

国民盟約（英語：National Covenant）は、17世紀のスコットランドにおいて、イングランドおよびスコットランドの国王チャールズ1世が導入しようとした国教会祈祷書（ロード祈祷書）に反対して組織された抵抗運動です。この盟約は、スコットランドにおける長老制教会の維持を強く主張し、後のイングランドとの主教戦争、さらには清教徒革命へと繋がる大きな要因となりました。スコットランドには、古くから特定の主張を共有する際に結束して盟約を結ぶ習慣がありましたが、国民盟約はその代表的な事例として歴史に名を刻んでいます。

国民盟約の背景

スコットランドにおける盟約の歴史は、1557年にまで遡ります。長老派が結集して最初の盟約を結び、1560年にはローマ教皇を非難する声明を発表しました。特に重要なのは1581年の盟約で、これはスコットランドにおけるローマ・カトリックへの回帰を阻止するために、1560年の盟約を再確認し、その反対を明確に打ち出したものでした。これらの盟約は、貴族から聖職者、一般市民に至るまで、広範な人々を巻き込み、スコットランド社会に深く根付いていました。

1638年の国民盟約

1638年の盟約は、主教戦争の直接的な引き金となりました。チャールズ1世は、イングランド教会だけでなくスコットランド教会も自身の支配下に置こうと試み、そのためにはイングランド国教会の形式である監督制を導入する必要がありました。そこで、カンタベリー大主教ウィリアム・ロードの進言を受け、1637年に国教会形式の祈祷書をスコットランド教会に導入しました。これに対し、スコットランドは激しく反発し、モントローズ伯ジェイムズ・グラハム、アーガイル侯アーチボルド・キャンベル、リーヴェン伯アレクサンダー・レズリーらが中心となって、1638年2月28日に国民盟約が結成されました。この盟約は、イングランドに対して二度にわたる主教戦争を挑み、いずれも実質的な勝利を収め（ベリック条約、リポン条約）、1640年にはスコットランド議会が祈祷書の破棄を議決するに至りました。

主教戦争後の盟約派

2度の勝利により長老派教会の存続は確保されましたが、国民盟約は解散されませんでした。1642年に勃発した清教徒革命（イングランド内戦）の間、盟約は事実上スコットランドの統治機関として機能しました。盟約軍はアイルランド・カトリック同盟の鎮圧にも派遣されましたが、この過程で国民盟約内部に対立が生じ始めました。スコットランドの完全な支配を求める強硬派と、国王の下での統治を支持する穏健派に分裂し、それぞれイングランドの議会派と王党派に結びついて、1644年にスコットランド内戦が勃発しました。

内戦初期は、チャールズ1世によって伯爵から侯爵に昇格したモントローズ侯が率いる穏健派が優勢でしたが、冬になり強硬派がイングランドに派遣していた援軍を帰還させると、形勢は逆転しました。農繁期に入ったスコットランドでは、モントローズ侯の元に集まる兵が減少し、リーヴェン伯とアーガイル侯に敗れました。1650年にモントローズ侯が処刑された後、オリバー・クロムウェルの遠征軍が到来するまで、アーガイル侯を首長とする国民盟約がスコットランドを統治することとなりました。

まとめ

国民盟約は、スコットランドの宗教的、政治的な独立を守るために重要な役割を果たしました。この盟約は、単なる宗教的な運動にとどまらず、スコットランドのナショナリズムを形成する上でも大きな影響を与え、後の歴史においても重要な意味を持つ出来事となりました。

参考文献

『プロテスタントの歴史』エミール G.レオナール著 渡辺信夫訳 文庫クセジュ
『スコットランドにおける教会と国家』トマス・ブラウン すぐ書房
『基督教全史』ケアンズ　聖書図書刊行会

関連項目

ダンバーの戦い
ウスターの戦い
カヴェナンター
厳粛な同盟と契約
en:Kirk
en:Kirk Party
en:Battle of Mauchline Muir

外部リンク

* 改革長老（カベナンター）教会成立の歴史 (PDF)

もう一度検索