イン・モー・ヤン

韓国出身のヴァイオリニスト、ヤン・インモー（양인모、梁 仁模、1995年7月26日生）は、現代を代表する演奏家の一人として国際的に活躍しています。

彼のキャリアにおける最も重要な功績は、ヴァイオリン界で権威ある二つの国際コンクールでの優勝です。2015年には、イタリアのジェノヴァで開催された第54回パガニーニ国際ヴァイオリン・コンクール「プレミオ・パガニーニ」で、2006年以来となる第一位の栄冠に輝きました。さらに、2022年にはフィンランドのヘルシンキで行われた第12回シベリウス国際ヴァイオリン・コンクールでも優勝を果たし、異なる年代に開催されたこれら二つの難関コンクールを制覇した数少ないヴァイオリニストとなりました。

ヤンの音楽的な才能は幼い頃から頭角を現し、11歳でイ・ウォン神童シリーズにてリサイタル・デビュー。15歳で韓国放送交響楽団との共演でオーケストラ・デビューを飾りました。教育面では、韓国芸術大学でナムユン・キムに師事した後、アメリカのニューイングランド音楽院でミリアム・フリードのもと研鑽を積み、音楽学士号とアーティスト・ディプロマを取得。その後ドイツへ渡り、ハンス・アイスラー音楽大学でアンティェ・ヴァイトハースに師事し、ヴァイオリン・パフォーマンス修士号を取得するなど、国際的な環境で専門的な訓練を積みました。

学生時代から数々のコンクールで頭角を現しており、2012年のハノーファー・ヨーゼフ・ヨアヒム国際ヴァイオリン・コンクールで4位、2013年の宗次エンジェル・ヴァイオリン・コンクールで2位に入賞しています。特に2014年は飛躍の年となり、ニューヨークのコンサート・アーティスト・ギルド・コンクールで優勝し、同年テキサス州オースティンで開催された若手ヴァイオリニストのためのユーディ・メニューイン国際コンクール、シニア部門でも2位を獲得しました。

2015年のパガニーニ国際コンクール優勝は、彼の名声を決定的なものとしました。当時の審査委員長であった著名な指揮者ファビオ・ルイージは、ヤンを「直感的なミュージシャンであり、彼のパガニーニは魅惑的で絶妙」と高く評価しました。この優勝に加え、ヤンは最年少ファイナリスト賞、コンテンポラリー・オリジナル作品最優秀演奏賞、聴衆からの最高演奏評価賞など、複数の特別賞を同時に受賞し、その多方面にわたる実力が認められました。さらに、ニッコロ・パガニーニが所有していた伝説的なヴァイオリン「イル・カノーネ」（グアルネリ・デル・ジェス、1743年製）を使用した特別リサイタルを行う機会を得たことは、彼のキャリアにとって記念碑的な出来事でした。

コンクール優勝後、ヤンは世界主要都市での公演を精力的に行っています。2016年にはコンサート・アーティスト・ギルド・コンクールの優勝者として、音楽の殿堂カーネギーホールのワイル・リサイタルホールでニューヨーク・デビューを飾りました。また、音楽活動に留まらず、2019年にはボストンで開催されたTEDカンファレンスで、彼が所有するストラディヴァリウス・ヴァイオリンについてプレゼンテーションを行うなど、幅広い活動を展開しています。

2022年のシベリウス国際ヴァイオリン・コンクールでの優勝は、彼の円熟した演奏家としての地位を確固たるものにしました。このコンクールでは、課題曲として委嘱されたマグヌス・リンドベルイ作曲「カプリース」の最優秀演奏賞もシベリウス家より授与され、現代作品への深い洞察力と表現力も高く評価されています。

ヤン・インモーは、歴史的な名器の使用経験も豊富です。パガニーニの「イル・カノーネ」の他、アントニオ・ストラディバリウス製作の「ヨアヒム・マ」（1714年製）や「ボストニアン」（1705/1718年製）などを使用してきました。現在は、ジョヴァンニ・バッティスタ・グァダニーニが1772年に製作したヴァイオリンを愛用しています。

録音活動にも積極的で、2018年にはニッコロ・パガニーニの「24のカプリース」全曲録音をドイツ・グラモフォンよりリリースし、その卓越した技巧を示しました。2021年にはユニバーサル ミュージック リミテッドより「The Genetics of Strings」をリリースするなど、精力的に作品を発表しています。

その情熱的かつ洗練された演奏スタイルで、ヤン・インモーはクラシック音楽界において最も期待されるヴァイオリニストの一人として、今後のさらなる飛躍が注目されています。

もう一度検索