イン・ロンドン (B.B.キングのアルバム)

キング・オブ・ザ・ブルースとして世界的な尊敬を集めるB.B.キングが、1971年にイギリスの首都ロンドンで制作・発表したスタジオ・アルバム、その名も『イン・ロンドン』（In London）。

この作品は、B.B.キングがロンドンのスタジオに乗り込み、大勢のゲストミュージシャンを招いて行われた豪華なセッションを記録しています。当時のイギリスではブルースロックが盛んだったこともあり、アメリカのブルースレジェンドとイギリスやアメリカのロック・ポップシーンで活躍するミュージシャンとの交流が生んだサウンドが大きな魅力となっています。

レコーディングには多岐にわたる才能が集結しました。鍵盤楽器奏者のゲイリー・ライトは、多くの楽曲でその腕前を披露しただけでなく、インストゥルメンタル曲「ウェット・ヘイシャーク」を書き下ろして提供しています。また、「アレクシス・ブギー」では、イギリスのブルースシーンの立役者であるアレクシス・コーナーに加え、当時人気絶頂だったバンド、ハンブル・パイのメンバー3人が参加。この曲では、特筆すべきことにB.B.キング自身が公式レコーディングとしては初めてアコースティック・ギターを手にしています。

ドラマーとしては、元ビートルズのメンバーであるリンゴ・スターが参加している点が注目されます。彼は合計3曲でドラムスを担当しており、うち「ゲットー・ウーマン」と「ウェット・ヘイシャーク」の2曲では、名セッションドラマーのジム・ゴードンとのツイン・ドラムという珍しい編成で演奏。一方で「パート・タイム・ラヴ」では単独でドラムスを叩いています。また、リンゴと共にビートルズのメンバーだったジョン・レノンもセッションに誘われたものの、当時はイギリスを離れてニューヨークに滞在中だったため、参加は実現しませんでした。

他にも、ブルース・ブレイクスなどで活躍したギタリストのピーター・グリーン、サックス奏者のボビー・キーズ、ベーシストのクラウス・フォアマンなど、ロックやブルース、R&Bの様々な分野から実力派ミュージシャンが多数参加しており、当時の音楽シーンにおけるジャンルを超えた交流を象徴する顔ぶれが揃いました。

アルバムのレコーディングが行われたコマンド・スタジオでのセッションの様子は、BBCによってドキュメンタリー番組としても撮影され、翌1972年に放映されています。

商業的な反響も良好でした。アメリカの主要なアルバムチャートであるBillboard 200では最高57位を記録し、ブルースやR&Bの専門チャートであるビルボードのR&Bアルバム・チャートでは15位にランクイン。これは、当時のブルースアルバムとしては比較的高い順位と言えます。

また、本作からは2枚のシングルがリリースされました。第1弾シングル「ゲットー・ウーマン」は、総合チャートのBillboard Hot 100で68位、R&Bシングル・チャートで25位に到達。続く「エイント・ノーバディ・ホーム」はHot 100で46位、R&Bチャートで28位と、こちらもそれぞれのチャートで上位に進出しました。

アルバムには、「キャルドニア」や「ブルー・シャドウズ」といったスタンダードから、ゲイリー・ライト提供の「ウェット・ヘイシャーク」のようなオリジナルトラック、そしてインストゥルメンタル曲も含まれています。後の1993年以降に再発されたCDには、ボーナス・トラックとして「メイ・アイ・ハヴ・ア・トーク・ウィズ・ユー」が追加収録されました。

『イン・ロンドン』は、B.B.キングが国際的なミュージシャンとのコラボレーションを通じて、そのブルースサウンドに新たな息吹を吹き込んだ意欲作であり、ブルースとロックの歴史における重要な接点を示す作品として位置づけられています。

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