イヴェット・ルーディ

イヴェット・ルーディ（1929年4月10日 - ）は、フランスの政治家であり、社会党の重要なメンバーでした。彼女は欧州議会議員、女性権利大臣、国民議会議員、そしてリジュー市長といった数々の要職を歴任しました。

特に、フランソワ・ミッテラン政権下で女性権利大臣を務めた際、ルーディは女性の権利擁護と地位向上に精力的に取り組みました。彼女の最大の功績は、いわゆる「ルーディ法」として知られる二つの重要な法律の成立を主導したことです。

人工妊娠中絶の保険適用に関する法律：これにより、経済的な理由で中絶をためらう女性を救済し、中絶の権利をより現実的なものとしました。
男女職業平等法：これは、職場における男女間の差別を禁止し、女性の社会進出を促進するための画期的な法律でした。同一価値労働同一賃金の原則を確立し、企業に男女間の状況に関する報告を義務付けるなど、具体的な措置を盛り込んでいます。

ルーディの政治家としての歩みは、労働者階級の家庭に生まれたことに始まります。彼女は幼い頃に母親を亡くし、父親の手で育てられました。高等教育を受ける機会は限られていましたが、彼女は持ち前の努力と向学心で英語を習得し、バカロレアを取得するなど、自らの道を切り開いていきました。

1956年にパリに移り住んだことが、彼女の人生における転機となりました。そこで、作家のコレット・オードリーとの出会いをきっかけに、フェミニズム運動に触発され、ベティ・フリーダンやエレノア・ルーズベルトといった先駆的な女性たちの著作翻訳に携わりました。また、フランソワ・ミッテランを支持する政治クラブ「女性民主主義運動」に参加し、ジゼル・アリミをはじめとする多くのフェミニストたちと交流を深めました。

1965年の大統領選挙でミッテランが落選した後も、ルーディは女性の権利擁護と社会党の活動に積極的に関わりました。彼女はスウェーデンに滞在して女性の地位に関する調査を行ったり、社会党内で女性の地位向上を訴えたりするなど、地道な活動を続けました。

1981年、ミッテランが大統領に当選すると、ルーディは女性権利大臣に任命され、念願の女性政策実現に尽力します。国際女性デーの正式制定、女性の権利に関する調査委員会の設置、『女性権利ガイド』の作成など、数々の施策を実施しました。また、クオータ制導入を目指しましたが、当時は憲法裁判所に違憲と判断され、実現には至りませんでした。

1986年に社会党が下野すると、ルーディは国会議員やリジュー市長として地方政治に携わる傍ら、女性の政治参加を促進するための活動を続けました。2000年には、長年の悲願であった「パリテ法」（選挙における男女同数制）が成立し、女性の政治参画への道が開かれました。

ルーディは、その生涯を通じて、フェミニズムと社会主義の融合を追求し、女性が平等で尊厳ある社会の実現のために闘い続けました。彼女の功績は、フランスにおける女性の地位向上に大きな足跡を残し、現代のフェミニズム運動にも大きな影響を与えています。

彼女はまた、数多くの著書を通じて自身の経験や思想を発信しました。自伝『フェミニスムの現在 ― 自伝・フランスでの闘い』では、労働者階級出身の女性が政治家として活躍するまでの道のりを赤裸々に語り、多くの人々に勇気を与えました。

イヴェット・ルーディは、フランスのフェミニズム運動における重要な人物の一人として、その名が永遠に記憶されることでしょう。

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