イーグル・MkIII

イーグル・MkIIIの全貌

イーグル・MkIIIは、1991年から1993年までIMSA-GTPクラスで競技していたプロトタイプのレーシングカーであり、アメリカのオール・アメリカン・レーサーズ（AAR）およびTRD USAによって開発されました。この車両は、IMSAにおけるトヨタ・セリカの成功に続き、より高いクラスであるIMSA-GTPに進出したAARの技術の結晶です。

参戦の背景

AARは1983年からIMSAの市販車改造部門でトヨタ・セリカを用いて競い合い、タイトルを獲得した実績があります。1989年からはIMSA-GTPへとステップアップし、最初はトヨタ88CとHF89という2台体制で活動を開始しました。しかしHF89はトラブルが相次ぎ、初年度は88Cに注力することとなります。その後HF89はHF90、そしてMkIIIへと進化し、競技に挑むことになります。

エンジンと設計

MkIIIは、直列4気筒シングルターボエンジン「3S-G型」を搭載しました。GTPレギュレーションの下では、多気筒エンジンが必ずしも有利ではなかったため、この選択がなされました。このエンジンはコンパクトで、前後の重量配分および空力開発に寄与しました。シーズンに応じて最大出力は700から770馬力に達し、非常に高い性能を発揮しました。

モノコックはカーボンファイバーを使用し、軽量かつ強固なボディを実現。また、ラジエーターやインタークーラーはコックピットの側面に配置され、空間を有効活用していました。デビュー当初はルーフ上にリヤビュー・カメラを搭載し、運転手が後方を見ることができるよう工夫されていました。

空力性能

MkIIIはその外観とは裏腹に、高い空力性能を誇ります。フロント部分から取り込まれた空気は、フロントディフューザーにより強力なダウンフォースを生み出します。さらにリヤディフューザーも同様に機能し、空気の流れを効果的に利用します。1992年の第9戦ラグナ・セカからは2段式リヤウイングが採用され、空力性能はさらに向上しました。これにより、時速200マイル（320㎞）で生じるダウンフォースは、従来の3.06トンから4.2トンへと増加しました。この数値は、当時のF1マシンのダウンフォース量をも上回るものであり、アメリカのサーキット事情に合わせた高度な空力技術の賜物です。

戦績

1991年

イーグルMkIIIはIMSA-GTP第11戦のラグナ・セカで華々しくデビュー。予選では2位からスタートし、レース終盤までリードを持続しましたが、ペナルティの影響で7位に留まりました。しかし、続く第12戦ポートランドでは初優勝を達成し、最終戦のデル・マーでも勝利を重ね、初年は4戦中2勝を収めました。

1992年

1992年シーズンは、日産やジャガー、トヨタに加え、新たにシボレーとマツダも参戦し、熾烈なタイトル争いが繰り広げられました。イーグルMkIIIは早い段階からその実力を示し、セブリング12時間やライムロックでの勝利を挙げた後、何と最終戦デル・マーまで7連勝を達成。これにより、トヨタはマニュファクチャラー・ドライバーの両タイトルを獲得しました。

1993年

競争相手が少なくなった1993年、イーグルMkIIIは圧倒的な強さを発揮し、ほぼ全てのレースで勝利を収めました。特にデイトナ24時間やセブリング12時間などの重要なレースでも優勝を果たし、トヨタは2年連続のダブルタイトルを獲得しました。しかし、IMSAはGTPクラスを1993年限りで廃止する決定を下し、イーグルMkIIIは27戦中21勝という圧倒的な成績を残し、歴史に名を刻みました。

このように、イーグル・MkIIIは技術革新と圧倒的なパフォーマンスでIMSA-GTPクラスを支配し、多くのファンに愛される存在となりました。

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