イーストセントルイス

イーストセントルイス：繁栄から衰退へ、ミシシッピ川対岸の街の物語

イーストセントルイスは、イリノイ州セントクレア郡に位置する都市で、ミズーリ州セントルイスとミシシッピ川を挟んで向かい合っています。かつては人口8万人以上を数え、イリノイ州第4の都市として栄えましたが、2020年の国勢調査では人口は1万8000人台にまで減少。その歴史と現状を紐解いていきます。

古代からの歴史と産業の隆盛

この地には、ミシシッピ文化の遺跡が残されており、その歴史は1790年にセントクレア郡が設立された頃まで遡ります。19世紀に入ると、セントルイスと並ぶ水上交通の要衝として発展。その後、鉄道の開通や国道66号線（ルート66）の建設により、鉄道関連産業や製鉄業が盛んになり、1930～50年代にはレストランや劇場などが立ち並ぶ活気に満ちた街となりました。1950年には人口がピークに達し、イリノイ州第4の都市となりました。

衰退の始まりと都市問題

しかし、1950年代以降、イーストセントルイスは急速に衰退を始めます。南部からの黒人人口流入、市政の混乱、工場閉鎖、犯罪増加などが重なり、街は徐々に荒廃していきました。公民権運動の高まりによる暴動なども、その衰退を加速させる要因となりました。歴代市長による市政の失敗も、財政悪化やインフラ整備の遅れといった問題を引き起こし、犯罪率の増加や治安の悪化に繋がりました。下水道整備の失敗やゴミ収集の停止、警察のパトロール不足など、市民生活に深刻な影響を及ぼす事態が頻発しました。

経済活性化への試みと現状

1990年代にはカジノの誘致や新たな噴水（ゲートウェイ・ガイザー）の建設、メトロリンクの開通など、経済再生に向けた取り組みが行われました。しかし、これらの施策だけでは衰退を食い止めることができず、人口減少は続き、現在も多くの地域でスラム化が進んでいます。2020年の国勢調査では、人口の約96％がアフリカ系住民で、3分の1が貧困層という現状です。かつての繁栄を象徴する歴史的建造物も老朽化が進み、廃墟と化しているものも多いです。犯罪発生率は全米最悪レベルであり、殺人や強姦事件の発生率は全米平均を大きく上回っています。

地理と交通

イーストセントルイスは、セントルイスの対岸に位置し、面積は約37km²です。温暖な夏と寒い冬に特徴づけられる気候で、イリノイ州の観測史上最高気温（摂氏48度）を記録したこともあります。交通面では、セントルイス近郊電車のメトロリンクが市内を走っており、州間高速道路I-55、I-64、I-70が交差しています。これらの道路はミシシッピ川を渡り、セントルイスへと繋がっています。

観光名所

衰退した街ではありますが、観光名所もいくつか存在します。セントルイスのゲートウェイ・アーチに対をなすように建設されたゲートウェイ・ガイザーは、世界でも有数の高さを持つ噴水です。ミシシッピ川沿いのカジノ・クイーンは、セントルイスの街並みを望むことができるホテルとカジノを備えています。

まとめ

イーストセントルイスは、かつての繁栄から一転、深刻な都市問題を抱える街へと変貌しました。産業の衰退、市政の失敗、犯罪増加など、様々な要因が複雑に絡み合い、現在の状況を招いたと言えるでしょう。歴史的建造物の保存や経済活性化、治安改善など、多くの課題が残されています。しかし、その歴史と現状を知ることで、都市の再生に向けた取り組みの重要性を改めて認識することができるでしょう。

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