イータ中間子

イータ中間子 (η) とイータプライム中間子 (η')

イータ中間子（η）およびイータプライム中間子（η'）は、アップクォーク、ダウンクォーク、ストレンジクォーク、そしてそれらの反クォークから構成される中間子です。これらは、素粒子物理学において重要な役割を果たしており、その特性は様々な理論的研究の対象となっています。

チャームクォークやボトムクォークを含むチャームイータ中間子（ηc）とボトムイータ中間子（ηb）は、イータ中間子と同じスピンとパリティを持つクォーコニウムです。ただし、トップクォークは質量が非常に大きく、崩壊が速いため、同様のトップイータ中間子（ηt）は存在しません。

発見

イータ中間子は1961年、ベバトロンでのパイ中間子と核子の衝突実験中に発見されました。この発見は、素粒子物理学における新たな粒子の存在を示唆し、その後の研究を加速させるきっかけとなりました。

η-η' パズル

イータ中間子とイータプライム中間子の質量の差は、単純なクォークモデルの予測よりも大きくなることが知られています。この現象は「η-η' パズル」と呼ばれ、長年にわたり物理学者たちを悩ませてきました。

このパズルの解明には、U(1)A 問題が深く関わっています。U(1)A 問題とは、軸性カレントの保存則が量子色力学（QCD）においてアノマリーにより破れているという問題です。このアノマリー効果により、イータプライム中間子の質量が異常に大きくなると考えられています。

Witten–Veneziano 機構

large-Nc極限においては、イータ中間子とは異なり、イータプライム中間子はグルーオンのみの状態を経由するファインマンダイアグラムを描くことができます。この性質を利用することで、質量差を説明することが可能です。この機構は、エドワード・ウィッテンとガブリエーレ・ヴェネツィアーノによって提唱され、Witten–Veneziano 機構と呼ばれています。

強いCP問題との関連

イータ中間子に関するU(1)A問題が解決されると、量子色力学の真空がCP対称性を破る可能性が生じます。これは強いCP問題として知られており、素粒子物理学における未解決の重要な問題の一つです。

まとめ

イータ中間子とその関連現象は、素粒子物理学における様々な深い問題と結びついています。これらの研究は、クォーク模型の理解を深め、量子色力学の性質を解明する上で不可欠です。

参考文献

Eta Meson at the Particle Data Group

関連項目

量子異常
1/N展開
強いCP問題

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