イーノス・スローター

イーノス・ブラッシャー・スローターについて

イーノス・ブラッシャー・スローター（Enos Bradsher Slaughter）は、アメリカのプロ野球界で1940年代から1950年代にかけて名を馳せた選手です。彼は1916年にノースカロライナ州ロックスボロで生まれ、その後セントルイス・カージナルスで活躍しました。愛称は「カントリー」であり、特に右翼手として知られています。

プロ入りと成績

スローターは、1935年にカージナルスと契約し、1938年にはメジャーデビューを果たしました。彼の初年度は112試合に出場し、打率は.276という好成績を残しました。スムーズなレベルスイングによるコンタクトヒッターとして評価され、2年目には打率.320を達成し、リーグ最多の52本の二塁打を記録しました。その後の数年間、スローターは自己最高打率を記録し続け、1942年にはリーグ最多の188安打を記録して首位打者に輝きました。

第二次世界大戦中は軍に従軍し、サイパン島での経験を経て戦後復帰しました。彼は1946年に130打点を挙げ、リーグの打点王に輝くとともに、ワールドシリーズでもカージナルスの優勝に貢献しました。彼のパフォーマンスはオールスターゲームへの参加に繋がり、1946年から1953年まで連続で出場しました。

知名度を上げたプレー「マッド・ダッシュ」

スローターの最も名高いプレーの一つに、「マッド・ダッシュ」があります。1946年のワールドシリーズ第7戦、ゲームが同点の状況下で、彼は一塁走者として二塁打を放ったハリー・ウォーカーのもとから一気に本塁に向かいました。この見事な走塁は試合の決定的なポイントとなり、観客やファンの記憶に残るものとなっています。この際の走塁は、実際にはシングルヒットだったとの声もありますが、スローターのスピード感ある走りは今尚語り継がれる名場面です。

人種差別とその影響

しかし、スローターには人種差別的な行動も報じられています。1947年にジャッキー・ロビンソンがメジャーリーグに昇格した際、「黒人選手がプレーするなら試合を放棄する」としたストライキの扇動者として知られています。これ以後、スローターの行動はカージナルスに蔓延する人種差別的な風潮を助長する要因となり、チームはアフリカ系選手を受け入れにくい状況となりました。

引退後の生活

1953年にカージナルスを離れた後、スローターはヤンキースやアスレチックスなど、他のチームを渡り歩きましたが、最終的には1959年にミルウォーキー・ブレーブスで現役を引退しました。引退後はマイナーリーグの選手兼監督を務め、1971年から1977年までデューク大学の野球チームのヘッドコーチとしても活躍しました。

最後の業績

1985年にはアメリカ野球殿堂に選出され、彼の背番号『9』は1996年にカージナルスによって永久欠番にされました。しかし、2002年に悪性リンパ腫により亡くなるまで、彼はその人種差別に関する評価のために複雑な存在として記憶されています。

イーノス・ブラッシャー・スローターのキャリアは、成績だけでなく、彼の行動や時代背景と密接に結びついています。彼の影響は野球界に留まらず、社会的な問題にも波及しており、後世に残る教訓ともなっています。

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