ウィズイン・ユー・ウィズアウト・ユー

ウィズイン・ユー・ウィズアウト・ユー：ジョージ・ハリソンのインド音楽へのオマージュ

ビートルズの1967年発表アルバム『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』に収録されている「ウィズイン・ユー・ウィズアウト・ユー」は、ジョージ・ハリソンが作詞作曲を手掛けた楽曲です。同アルバムのB面1曲目に配置され、『リボルバー』の「ラヴ・ユー・トゥ」に続く、インド音楽の影響を強く受けた作品として知られています。

制作背景：インド音楽への傾倒と精神性の探求

1967年初頭、ハリソンは友人宅での夕食後、精神性に関する議論の中でインスピレーションを受け、本作の作曲を始めました。自身の手記『I Me Mine』で、ハーモニウムの演奏中にメロディーと歌詞の断片が浮かんだと記しています。この曲は、ハリソンがインド音楽に深く傾倒していた時期に生まれたもので、その影響は楽曲全体に色濃く反映されています。

前年に発表された『リボルバー』に収録された「ラヴ・ユー・トゥ」もインド音楽を取り入れていましたが、「ウィズイン・ユー・ウィズアウト・ユー」では、タンブーラやインド式ハーモニウムといったインド伝統楽器がより積極的に使用されています。その背景には、1966年、妻パティ・ボイドと共にインドを訪れ、古代ヒンドゥー教の教えに深く感銘を受けた経験があります。帰国後、ハリソンはシタール奏者のラヴィ・シャンカルに師事し、インド古典音楽を本格的に学び始めました。シャンカルがオール・インディア・ラジオのために録音した楽曲をモチーフに、本作は作曲されたとされており、その長大なオリジナル作品からインスピレーションを得て、独自の解釈を加えたとされています。

当初、アルバム『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』には別の楽曲が予定されていましたが、プロデューサーのジョージ・マーティンによって却下され、「ウィズイン・ユー・ウィズアウト・ユー」が代わりに収録されることになりました。

レコーディング：異国の雰囲気漂うスタジオセッション

レコーディングは1967年3月15日、EMIレコーディング・スタジオで行われました。ハリソン以外のビートルズメンバーは参加せず、ロンドン交響楽団のメンバーとエイジアン・ミュージック・サークルのミュージシャンと共に、タブラ、スワラマンダラ、タンブーラ、ディルルバといったインド楽器を中心とした編成でベーシック・トラックが録音されました。スタジオにはインドのタペストリーが飾られ、お香が焚かれるなど、インドの雰囲気が演出されたとのことです。

数日後、ディルルバのパートを追加し、モノラルミックスが作成されました。その後、4月3日にはロンドン交響楽団の弦楽器奏者を加え、オーケストラアレンジが施されました。この際、ディルルバの音色の変化に合わせ、弦楽器セクションの高い演奏技術が求められたそうです。完成したインストゥルメンタルに、ハリソンのボーカルとシタール、アコースティックギターがオーバーダビングされました。

マスター音源では、バッキングトラックのスピードを上げて再生することでテンポが速まり、キーも変更されています。また、楽曲の最後は、EMIレコーディング・スタジオのライブラリにあった観客の笑い声と拍手音で締めくくられており、これはメンバーによる意図的な演出でした。

リリースとその後：様々なバージョンと評価

「ウィズイン・ユー・ウィズアウト・ユー」は、1967年6月1日に発売された『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』に収録されました。その後、EPやシングル、コンピレーションアルバムにも収録され、様々なバージョンがリリースされています。2006年には、シルク・ドゥ・ソレイユのショーのサウンドトラックアルバム『LOVE』に、「トゥモロー・ネバー・ノウズ」とマッシュアップされたリミックスバージョンが収録されたことも話題を呼びました。

リリース当初から、本作に対する評価は賛否両論ありました。中には、インド音楽の影響を理解できないという意見もあった一方で、ハリソンによる最高傑作と絶賛する意見もありました。現代においても、その独特のサウンドと精神性は、多くの音楽ファンを魅了し続けています。

カバーバージョン

多くのアーティストが「ウィズイン・ユー・ウィズアウト・ユー」をカバーしており、その中にはソニック・ユース、オアシス、パティ・スミス、チープ・トリック、ザ・フレーミング・リップスといった著名なミュージシャンも含まれています。これらのカバーバージョンは、オリジナル楽曲への新たな解釈を示すだけでなく、本作の持つ普遍的な魅力を再確認させる役割を果たしています。

結論

「ウィズイン・ユー・ウィズアウト・ユー」は、ジョージ・ハリソンのインド音楽への探求と深い精神性、そしてビートルズという枠を超えた音楽的挑戦が凝縮された、唯一無二の作品と言えるでしょう。その複雑なレコーディングプロセスや、時代を超えて様々なアーティストに影響を与え続けている事実は、この楽曲が持つ普遍的な魅力と重要性を物語っています。

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