ウィリアムズバーグ橋

アメリカ合衆国、ニューヨーク州ニューヨーク市を流れるイースト川の上に架かるウィリアムズバーグ橋は、マンハッタン島のロウアー・イースト・サイド地区とブルックリンのウィリアムズバーグ地区をつなぐ、歴史ある吊橋です。

建設と初期の栄光

この橋の建設は1896年に始まり、約7年の工事期間を経て、1903年12月19日に一般供用が開始されました。完成当時、ウィリアムズバーグ橋は特筆すべき存在でした。その主径間は約488メートルに達し、それまで世界最長であったブルックリン橋を凌駕したのです。一時的に世界最長の吊橋としての記録を保持しましたが、この記録は1924年に竣工したベアー・マウンテン・ブリッジによって更新されました。橋の総延長は約2,227メートルに及びます。イースト川の下流側には、同じくマンハッタンとブルックリンを結ぶマンハッタン橋が位置しています。

特徴的な構造と交通機能

ウィリアムズバーグ橋は、自動車通行と鉄道（地下鉄）通行の両方を可能とする鉄道道路併用橋という、ニューヨーク市においては珍しい形式の吊橋です。市内では、この橋とマンハッタン橋のみがこの機能を持っています。交通区分としては、自動車用の8車線に加え、ニューヨーク市地下鉄の複線軌道が設置されています。さらに、マンハッタン島とロングアイランドを結ぶ他の主要な橋と同様に、歩行者や自転車のための専用通路も設けられています。マンハッタン側ではデランシー・ストリートと、ブルックリン側ではブロードウェイとそれぞれ接続しており、両岸の主要な道路網と直結しています。

軌道系交通の変遷

この橋の軌道部分は、その歴史の中で様々な変化を遂げてきました。かつては、多数の路面電車系統がこの橋を渡っていました。特に、ブルックリンからマンハッタンへ向かう南側の二路線と、マンハッタンからブルックリンへ向かう北側の二路線には、以下のように多様な系統が存在し、運行期間も様々でした。

かつての路面電車系統

ブルックリン発マンハッタン行き（南側二路線）:
ウィリアムズバーグ橋緩行線（1904年–1948年）
ノストランド・アベニュー線（1904年–1923年、1931年–1948年）
ラルフ・アベニュー線 / ラルフ・アンド・ロッカウェイ・アベニュース線（1905年-1908年 / 1908年–1923年、1931年–1948年）
トンプキンズ・アベニュー線（1906年–1923年、1931年–1947年）
レイド・アベニュー線（1904年–1923年、1931年–1937年）
ブロードウェイ線（1904年–1923年）
フランクリン・アベニュー線（1904年–1923年）
グランド・ストリート線（1904年–1923年）
サムナー・ストリート線（1904年–1923年）
ウィルソン・アベニュー線（1904年–1923年）
ブッシュウィック・アベニュー線（1904年–1921年）
ノストランド-カルバー線 / ノストランド-プロスペクト線（1906年–1919年）

マンハッタン発ブルックリン行き（北側二路線）:
グランド・ストリート線（1904年–1932年）
ポストオフィス線（1919年-1932年）
7番街-ブルックリン線（1911年-1919年）
8丁目クロスタウン線（1904年–1911年）
14丁目-ウィリアムズバーグ橋線（1904年–1911年）
4番街・ウィリアムズバーグ線（1904年–1911年）

これらの路面電車網は姿を消しましたが、現在はこの橋の中央部をニューヨーク市地下鉄の軌道が走っています。元々はブルックリン・ラピッド・トランジットによって運営されていたこの路線は、現在、BMTナッソー・ストリート線およびBMTジャマイカ線として、時間帯に応じてJ、M、Zの各系統が運行されており、ブルックリンとマンハッタンを結ぶ重要な公共交通機関の役割を担っています。

老朽化と大規模修繕

長年の使用により橋の老朽化が進み、1988年4月11日には深刻な腐食やひび割れ、そしてケーブルの素線断線が発見されたため、安全確保のために橋が全面閉鎖される事態となりました。詳細な点検の結果、その損傷は架け替えも検討されるほど深刻なものでしたが、経済的な側面から大規模な修繕工事が選択されました。1990年代から2000年代にかけて実施されたこの広範な改修作業により、橋の構造的な健全性が回復されました。

現代における役割

改修を経て、ウィリアムズバーグ橋は現在もニューヨーク市の交通システムにとって不可欠な要素であり続けています。例えば、2008年のデータでは、日平均で106,783台もの車両がこの橋を通行しました。自動車、地下鉄、そして歩行者や自転車といった多様な交通手段を受け入れるこの橋は、両地区間の人や物の流れを支えています。

ポップカルチャーにおける登場

ウィリアムズバーグ橋は、その特徴的な外観や存在感から、様々な作品にも登場しています。

1948年の映画『裸の町』では、クライマックスシーンの舞台となりました。
1973年のジェームズ・ボンド映画『007 死ぬのは奴らだ』にも姿を見せています。
ジャズミュージシャンのソニー・ロリンズが、活動休止中にこの橋で練習を続けていたことが知られています。
1993年のNHKスペシャル『テクノパワー』では、1990年代の改修工事の様子が紹介されました。
* 映画『レディ・プレイヤー1』の冒頭のレースシーンにも、この橋に似た構造物が描かれています。

ウィリアムズバーグ橋は、単なる交通インフラとしてだけでなく、ニューヨーク市の歴史や文化の一部としても、多くの人々に記憶されています。

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