ウィリアム・キャヴェンディッシュ (初代ニューカッスル公)

初代ニューカッスル公 ウィリアム・キャヴェンディッシュ

初代ニューカッスル＝アポン＝タイン公爵ウィリアム・キャヴェンディッシュは、17世紀イングランドの激動期を生きた貴族、軍人、そして文化人です。1592年に生まれ、1676年にその生涯を閉じるまで、彼は政治、軍事、文化の各分野で重要な役割を果たしました。

生い立ちとステュアート朝との関わり

キャヴェンディッシュは、ノッティンガムシャーのジェントリの家に生まれ、母方の血筋からオグル男爵を継承しました。また、デヴォンシャー伯爵家とは親戚関係にあり、トマス・ホッブズをパトロンとして支援しました。キャヴェンディッシュはケンブリッジ大学を卒業後、ジェームズ1世、チャールズ1世と親交を深め、ステュアート朝との関係を深めていきます。1628年にはニューカッスル＝アポン＝タイン伯に叙され、1638年にはチャールズ皇太子（後のチャールズ2世）の家庭教師に任じられるなど、王室からの信頼も厚く、その関係は深まっていきました。

清教徒革命での活躍

キャヴェンディッシュの人生における転換期は、清教徒革命（イングランド内戦）でした。豊富な資金力で王室を支え、1639年の主教戦争では自費で兵を集めチャールズ1世を支援しました。1642年に内戦が勃発すると、彼は王党派に属し、自領から数千人の農民を兵士として派遣しました。北部で軍団を率い議会派と戦い、1643年のアドウォルトン・ムーアの戦いでは、ファーディナンド・フェアファクス卿とその息子トーマス・フェアファクスを破るなど、その軍事力を示しました。しかし、その後、ウィンスビーの戦いでの敗北により、リンカンシャーとヨークシャーを議会派に奪われ、窮地に陥りました。

亡命生活と王政復古

1644年、マーストン・ムーアの戦いでの大敗後、キャヴェンディッシュはフランス・パリへ亡命します。亡命中も王党派への財政援助を続け、亡命中のホッブズと再会し、彼らの論争の場を提供しました。また、チャールズ皇太子にホッブズを数学教師として推薦したとも伝えられています。しかし、イングランドの土地と財産を没収され、亡命生活は経済的に苦しいものでした。1660年の王政復古に伴い、キャヴェンディッシュはチャールズ2世と共にイングランドへ帰国し、1665年に公爵に昇叙され、引退しました。

引退後の生活と文化活動

引退後のキャヴェンディッシュは、ジョン・ドライデンやホッブズといった文化人のパトロンとして活動し、自身も詩作に励むなど、文化的な生活を送りました。彼は、ベン・ジョンソンをはじめとする多くの文人のパトロンであり、自らも劇作家として活動するなど、教養人としての側面も持ち合わせていました。1676年に84歳で死去し、爵位は息子のヘンリー・キャヴェンディッシュが継承しました。

結婚と子女

キャヴェンディッシュは、エリザベス・バセットと結婚し10人の子を儲けましたが、成人したのは息子ヘンリーのみでした。エリザベスと死別後、哲学者・作家として知られるマーガレット・ルーカスと再婚しましたが、マーガレットとの間には子供は生まれませんでした。

まとめ

初代ニューカッスル公ウィリアム・キャヴェンディッシュは、政治、軍事、文化の各分野で多大な影響を与えた人物でした。清教徒革命という激動の時代に、王党派としてチャールズ1世父子に忠誠を尽くし、また、哲学者ホッブズのパトロンとして文化の発展にも貢献しました。彼の生涯は、17世紀イングランドの歴史を語る上で欠かせない重要な一部分となっています。

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