ジョン・ドライデン

ジョン・ドライデン：王政復古時代の文豪

ジョン・ドライデン(1631年-1700年)は、イングランドの詩人、劇作家、そして文芸評論家として、17世紀の文学史に輝く名を残した人物です。王政復古期における彼の圧倒的な影響力は、この時代が「ドライデンの時代」と呼ばれる所以となっています。その多才ぶりと、政治・宗教的変化の渦中で生きた生涯、そして作品群を通じて、ドライデンの世界を探っていきましょう。

生い立ちと教育

ドライデンはノーサンプトンシャー州で、ピューリタン運動を支持するジェントリ家庭に生まれました。少年時代は近郊の村で過ごし、その後、王室奨学金を得て名門ウェストミンスター校へ入学します。同校では、厳格な校長リチャード・バスビー博士の下、修辞学や弁論術を徹底的に学びました。この教育が、彼の後の作品における洗練された表現力や論理的な思考に大きく貢献していることは間違いありません。

ウェストミンスター校での週ごとの翻訳課題は、ドライデンの語学力を磨いただけでなく、幅広い古典文学への造詣を深める機会となりました。在学中に詩作を始め、学友の死を悼むエレジーを発表するなど、早くからその才能を開花させています。その後、ケンブリッジ大学トリニティ・カレッジに進学し、1654年には首席で卒業。古典学、修辞学、数学を修め、学問的な基礎を築きました。

王政復古と詩人としての成功

クロムウェルの護国卿時代には、ロンドンに移り住み、政治的にも活動的な時期を過ごしました。クロムウェルの死を悼む詩作を発表した後、王政復古とチャールズ2世の帰還を祝う頌徳詩『Astraea Redux』を発表し、王党派としての立場を明確にしました。この詩はドライデンの政治的立場だけでなく、優れた詩人としての彼の力量を世に知らしめるものとなりました。

王政復古後、ドライデンは瞬く間に一流の詩人として認められます。複数の頌徳詩を発表し、王室や貴族への接近を試みるものの、独立した立場を保ち続け、出版社や大衆を主な顧客として、精力的に創作活動を続けます。公的なイベントを祝う頌徳詩や、叙事詩『驚異の年』など、数々の名作を生み出し、1668年には桂冠[[詩人]]に任命されました。

劇作家としてのドライデン

ピューリタン革命後の劇場再開と共に、ドライデンは劇作家としての活動も開始します。初期の作品は必ずしも成功とは言えませんでしたが、彼は王立組合と契約を結び、毎年3本の劇を制作するようになります。王政復古喜劇の代表作『当世風の結婚』をはじめ、英雄的悲劇や伝統的な悲劇にも挑戦し、その多様な作品群は、当時の人々の心を捉えました。

しかし、ドライデンは自身の劇作に完全には満足しておらず、観客のレベルの低さを嘆き、詩作により高い評価を得ようと努力しました。1665年のペスト流行で劇場が閉鎖された際には、ウィルトシャーに避難し、『劇詩論』を執筆。この作品は、古典、フランス、イギリスの演劇の長所を議論する対話形式をとっており、彼の批評家としての才能も示しています。

風刺詩と晩年

ドライデンの最大の功績の一つに、風刺詩の分野での活躍があります。桂冠[[詩人]]時代には、『マクフレクノー』や『アブサロムとアキトフェル』、『メダル』など、政治風刺に満ちた作品を次々と発表し、当時の権力者や敵対者たちを痛烈に批判しました。これらの作品は、その鋭い表現とユーモアのセンスで高い評価を得ています。

また、宗教詩『平信徒の宗教』や、ローマ・カトリックへの改宗を表明した『牝鹿と豹』なども発表。晩年には、ウェルギリウスやホメロスなどの古典作品を翻訳するなど、翻訳家としても活躍しました。1700年、ドライデンは生涯を終え、ウェストミンスター寺院に埋葬されました。

ドライデンの遺産

ドライデンの作品は、18世紀の詩人たち、アレキサンダー・ポープやサミュエル・ジョンソンなどに大きな影響を与えました。彼の批評は、英語圏の文学研究に欠かせないものとなっています。20世紀の詩人T・S・エリオットも、ドライデンの偉大さを高く評価しており、イギリス詩の歴史を理解する上で、ドライデン作品への理解は不可欠であると述べています。その多様な才能と、時代の変化を反映した作品群は、現代においても高く評価され続けています。

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