マーストン・ムーアの戦い

マーストン・ムーアの戦い：清教徒革命の転換点

1644年7月2日、イングランド内戦の激戦地、ヨーク西方10kmのマーストン・ムーアで、国王軍と議会軍が激突しました。この戦いは、それまでの膠着状態を打破し、議会軍に大きな優位をもたらす転換点となりました。

戦いの前哨戦：同盟と包囲

1643年、議会軍はスコットランド国民盟約と同盟を結び、スコットランド軍の支援を得ていました。これにより、イングランド北部で国王軍優勢の状況は変化を始めます。スコットランド軍の増援と、議会軍のファーディナンド・フェアファクス卿・トーマス・フェアファクス父子、マンチェスター伯エドワード・モンタギュー率いる東部連合軍の共同作戦により、ヨーク包囲が始まりました。

しかし、国王軍は反撃に出ます。チャールズ1世は甥のカンバーランド公ルパートを救援に派遣。ルパートはヨークに援軍を送り、包囲を解きました。こうして、両軍はマーストン・ムーアで対峙することになります。

激戦：クロムウェルの活躍と国王軍の敗北

両軍の布陣は、議会軍左翼にオリバー・クロムウェル率いる東部連合軍とスコットランド騎兵隊、中央にスコットランド歩兵隊、右翼にトーマス・フェアファクスの騎兵隊。一方、国王軍左翼はゴーリングとルーカスの騎兵隊、中央にルパートとニューカッスル侯の歩兵隊、右翼はバイロン男爵の騎兵隊が配置されました。

戦闘は夕暮れに開始されます。当初、議会軍は苦戦しましたが、クロムウェル率いる左翼の鉄騎隊が国王軍右翼を粉砕。バイロン男爵の反撃も押し戻し、戦況は一変しました。ルパートの反撃もクロムウェルの部隊とスコットランド軍の連携により撃退。ルパートは辛くも捕虜を免れ、戦場から退却しました。

一方、議会軍中央と右翼は国王軍に押され、劣勢にありました。しかし、クロムウェルの巧みな戦術により、国王軍左翼も撃破。孤立した国王軍歩兵隊も敗走し、国王軍は壊滅的な敗北を喫しました。ニューカッスル侯は大陸へ逃れ、ルパートもランカシャーへ退却しました。

戦後の政治的波紋：クロムウェルと議会

マーストン・ムーアの戦いは、議会軍にイングランド北部での優位をもたらしました。クロムウェルは、この戦いで名を上げ、大きな功績を挙げましたが、議会では彼の功績が軽視されました。長老派とスコットランドは、スコットランド軍司令官レズリーを勝利の立役者として主張し、クロムウェルは軽視するプロパガンダを展開しました。しかし、独立派はクロムウェルを英雄として祭り上げ、民衆の支持も得ました。この戦いを機に、独立派と長老派の対立は深刻化していき、後のイングランド内戦の展開に大きな影響を与えました。

この勝利にもかかわらず、議会軍は依然として弱体で、全面攻勢をかけるには至りませんでした。マンチェスター伯の消極的な姿勢も議会軍の進軍を阻みました。本格的な攻勢は、1645年のニューモデル軍創設を待たなければなりませんでした。マーストン・ムーアの戦いは、クロムウェルの台頭、そしてイングランド内戦の帰趨を決定づけた重要な戦闘だったのです。

参考文献

ジョン・ジョゼフ・バグリー著、海保眞夫訳『ダービー伯爵の英国史』平凡社、1993年
今井宏『クロムウェルとピューリタン革命』清水書院、1984年
松村赳・富田虎男編『英米史辞典』研究社、2000年
清水雅夫『王冠のないイギリス王 オリバー・クロムウェル―ピューリタン革命史』リーベル出版、2007年
* ジェフリー・リーガン著、森本哲郎監修『ヴィジュアル版「決戦」の世界史 歴史を動かした50の戦い』原書房、2008年

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