ウィリアム・ミューラー

トレバー・マードック：プロレス界のアウトロー

トレバー・マードック。この名を知って、その活躍を思い起こすプロレスファンも多いだろう。アメリカ合衆国ミズーリ州出身の彼は、1980年9月10日生まれのプロレスラーである。華麗な経歴の影には、幾多のリングネームと団体を渡り歩いた波乱の人生が隠されている。

若き日の挑戦とWLWでの成功

1999年、まだ若き日の彼は、ハーリー・レイスが設立したWLW（World Wrestling League）でプロレスラーデビューを果たす。リングネームは「トレバー・ローズ」、後に「トレバー・ローデス」と表記されることもあった。WLWでは3度もヘビー級王者に輝き、その実力を早くから証明してみせる。2002年には、プロレスリング・ノアに留学生として初来日。道場での厳しい練習、雑用や裏方業務、セコンドなど、地道な努力を積み重ねる日々を送った。ノアでの試合では、テンガロンハットと独特の腰くねりパフォーマンス「フォ〜ウ」がトレードマークとなり、観客の記憶に刻まれた。

WWEでの栄光と挫折

2005年、WWEの下部組織OVWを経て、WWEとディベロップメント契約を締結。ランス・ケイドとのタッグチーム「ケイド＆マードック」を結成し、デビューからわずか2週間で世界タッグ王座を獲得するという快挙を成し遂げる。しかし、その栄光は長くは続かず、王座を奪われ、その後シングルプレイヤーとして活動するも、RAWへの出場は限られていた。再びケイドとタッグを組み、ビンス・マクマホンに加担するなど、紆余曲折を経て、2度目の世界タッグ王座を獲得するも、突如「歌うキャラ」へと転身し、ケイドとの決別、そして2008年7月にはWWEから解雇されてしまう。

インディー団体での活躍とTNA参戦

WWE解雇後、IWAなどのインディー団体で活躍。2008年にはWLWとノアの合同キャンプで指導員を務めるなど、後進の育成にも携わるようになる。2009年5月には、TNA（Total Nonstop Action Wrestling）に「ジ・アウトロー ジェスロ・ホリデー」のリングネームで参戦するも、同年11月に解雇。その後は、アメリカのみならず、カナダ、メキシコ、ヨーロッパ、オーストラリア、韓国など世界各地の団体を転戦し、その高い実力を示し続けた。

WLW・ノアへの凱旋と新たな挑戦

自らの原点であるWLWにトレバー・マードックの名で再参戦、再び世界ヘビー級王者に返り咲く。2011年3月、7年ぶりにノアに参戦。GHCヘビー級王座への挑戦を表明し、杉浦貴への挑戦試合を行うも、惜しくも敗れた。近年もNWAなどの団体で活躍し、2020年9月にはNWAナショナルヘビー級王座を獲得するなど、現在も第一線で活躍を続けている。

独特のレスリングスタイルと得意技

トレバー・マードックのレスリングスタイルは、往年の名レスラー、ディック・マードックやダスティ・ローデスを彷彿とさせる肉体と、古典的なレスリング技術を兼ね備えている。得意技は、改良を加えたエース・オブ・スペード、ドリル・ア・ホール・パイルドライバー、ダイビング・ブルドッグなど、数々の技を駆使し観客を魅了してきた。ケイドとのタッグチーム時代には、合体技「ハイ・ロー」（旧称：スウィート＆サワー）も使用していた。

獲得タイトル

彼のキャリアは、数々のタイトル獲得によって彩られている。WWE世界タッグチーム王座（3回）、WLW世界ヘビー級王座（4回）、WLW世界タッグ王座（3回）、NWA世界ヘビー級王座（3回）、NWAナショナルヘビー級王座（1回）、NWA世界タッグ王座（1回）など、輝かしい戦績を残している。


トレバー・マードックの物語は、決して平坦な道ではなかった。幾多の苦難を乗り越え、世界中を舞台に活躍を続ける彼のレスラー人生は、これからも多くのプロレスファンを魅了し続けることだろう。

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