NWA世界ヘビー級王座

NWA世界ヘビー級王座：プロレス史における最高峰の軌跡

NWA（National Wrestling Alliance）世界ヘビー級王座は、プロレス界において特別な地位を占めるタイトルです。1980年代末にNWAが衰退するまで、世界最高峰のベルトとして広く認知されていました。

創設と初期の歴史

1948年、新NWAが設立され、オーヴィル・ブラウンが初代王者に就任。翌年には、ブラウンと旧NWA世界王者のルー・テーズによるタイトルマッチが予定されていましたが、ブラウンの引退によりテーズが第2代王者となりました。新NWAは、フランク・ゴッチを初代王者とする系譜を構築し、テーズを第38代王者として認定。以降、この時点からNWA世界王者の代数がカウントされることになります。

世界最高峰のベルトへ

ルー・テーズ、ジン・キニスキー、ドリー・ファンク・ジュニア、ハーリー・レイスといった実力者たちの活躍により、NWA世界ヘビー級王座は1980年代前半まで世界最高峰のベルトとして認識されました。王者は全米各地、そして海外のNWA会員プロモーターのテリトリーを転戦し、ローカルチャンピオンとの防衛戦をこなす必要があり、体力と精神力が求められました。NWAのルールでは、反則やリングアウトでの王座移動は認められず、オーバー・ザ・トップロープも反則とされていたため、これを利用した防衛策も存在しました。

NWA王者は各地をサーキットし、地元のスターレスラーと防衛戦を行うため、常に圧倒的な強さを見せるのではなく、苦戦しながらの勝利や引き分け、反則負けなどで防衛を重ねることが多く、高度なインサイドワークとヒールとしての側面が求められました。

日本人王者とNWAの衰退

ジャイアント馬場は、NWA黄金期にこのタイトルを3度獲得した唯一の日本人レスラーです。ただし、戴冠期間はいずれも1週間以内で、NWA王者の来日時に一時的に王座を貸与されたものでした。1980年代末、WWF（現WWE）の全米進出によりテリトリー制が崩壊し、NWAは衰退。ジム・クロケット・プロモーションズがテッド・ターナーに買収されWCWが台頭すると、NWA王座はWCWの管理下となり、その権威は大きく低下しました。

インディー団体から新日本プロレスへ

WCWのNWA離脱後、NWA王座はインディー団体の一王座にまで権威を落としましたが、2002年にTNAが王座管理権を獲得。その後、ROHなどのアメリカのインディー団体やメキシコのCMLLでタイトルマッチが行われるようになり、2008年にはブルー・デモン・ジュニアがメキシコ人初のNWA世界ヘビー級王者となりました。2013年からは新日本プロレスでもタイトル戦が行われ、2014年には小島聡が日本人として王座を獲得しました。

ベルトの変遷

NWA世界ヘビー級王座のベルトは、時代とともに変遷を重ねてきました。

初代（テーズベルト）：1937年に製作され、ルー・テーズが巻いたとされるベルト。WWAやUWFインターナショナルの王座にも使用されました。
2代目：1959年にパット・オコーナーが王者時代に登場。当初はベルベット地でしたが、後に黒革に変更されました。
3代目（ゴールドベルト）：1973年にジャック・ブリスコが王座奪取した際に登場。1キロもの黄金を使用した豪華なベルトで、馬場が3度目に奪取した際のベルトもこれでした。
4代目（ビッグゴールド）：1986年にリック・フレアーが披露。WCWでも使用され、WCW世界ヘビー級王座のベルトとなりました。

NWAがインディー系組織として再始動してからは、3代目の「レイスベルト」を復刻し、現在に至ります。

現在のNWA

2017年9月、NWAは組織変更を行い、認定していた王座は一旦凍結されましたが、世界ヘビー級王座と世界女子王座は継続して認定されています。

NWA世界ヘビー級王座は、プロレス史における重要なタイトルとして、その輝きを失うことなく、現在もその歴史を刻み続けています。

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