ウィンチェスター大聖堂

ウィンチェスター大聖堂：歴史と建築美が織りなす壮大な空間

ウィンチェスター大聖堂は、イギリスのウィンチェスターに位置する、イングランド国教会の大聖堂です。正式名称を「聖なる三位一体、聖ペトロ、聖パウロと聖スウィザンの主教座大聖堂」といい、ヨーロッパのゴシック様式大聖堂の中でも、特に長い身廊と全長を誇る、イギリス最大級の大聖堂の一つとして知られています。聖なる三位一体、聖ペトロ、聖パウロ、そして聖スウィザンに捧げられ、ウィンチェスター主教管区の中心として重要な役割を担っています。

大聖堂では、毎日4回の礼拝が行われ、特別な聖日にはその回数が増えます。聖歌隊による音楽や、ウィリス社製のパイプオルガンは特に有名で、その美しい音色は多くの人々を魅了します。礼拝以外の時間には、入場料を支払うことで大聖堂を見学することができます。

大聖堂の歴史

大聖堂の歴史は古く、その起源は7世紀にまで遡ります。642年頃には、現在の北側に「オールド・ミンスター」と呼ばれる建物が建てられました。971年には、このオールド・ミンスターが修道会定住地の一部となり、ウィンチェスター司教であった聖スウィザンが、この地に埋葬されました。その後、新たなノルマン様式の大聖堂が建設されることになり、オールド・ミンスターは1093年に廃止されました。大聖堂には、かつてオールド・ミンスターに埋葬されていた、サクソン朝の王たちの遺骨を納めたとされるモーチュアリー・チェストが安置されています。

現在の大聖堂の建設は、1079年に司教ウォークリンの時代に始まりました。1093年4月8日には、イングランドの司教と修道院長たちが集まり、オールド・ミンスターから新大聖堂へと移る儀式が行われました。大聖堂に残る最古の部分は、この時に建設された納骨堂です。バーネー公リチャードやウィリアム2世など、歴史上の人物もこの大聖堂に埋葬されています。

中央の四角い塔は、1202年に建設されたもので、これは、地盤の不安定さから崩壊した最初の塔の代替として建てられました。14世紀から16世紀にかけては、熟練した石工ウィリアム・ウィンフォードの設計により、ノルマン様式の身廊が改築されました。この改築は、聖スウィザンの霊廟に巡礼者が多く訪れるようになったことに対応するため、レトロクワイア（後陣）の建設も含まれています。

16世紀には、ヘンリー8世がイングランドのカトリック教会を支配下に置き、自らを長とするイングランド国教会を設立しました。これにより、ベネディクト会に属していたセント・スウィザン修道院は解散しましたが、大聖堂自体は存続しました。

20世紀初頭には、大聖堂は深刻な崩壊の危機に瀕していました。1905年から1912年にかけて、T・G・ジャクソンによる修復作業が行われ、大聖堂は救われました。特に、ダイバーのウィリアム・ウォーカーは、25,000以上の袋入りコンクリートや、大量のブロック、レンガを使用し、水浸しになっていた基礎部分を補強しました。ウォーカーは、暗闇の中、深さ6mもの場所で、1日6時間もの作業を続け、大聖堂を崩壊から救った功績から、ヴィクトリア十字勲章を授与されました。

大聖堂の見どころ

大聖堂には、見どころがたくさんあります。以下に主な場所や歴史的な出来事を記します。

フィッシャーマンズ礼拝堂: 作家アイザック・ウォルトンが埋葬されています。
アイアン・デューク (戦艦)の鐘: 聖歌隊共唱席にあります。
エピファニー礼拝堂: エドワード・バーン＝ジョーンズが製作したラファエル前派のステンドグラスや、ウィリアム・モリスの工房が製作したステンドグラスがあります。

また、大聖堂では、以下のような歴史的な出来事が起きました。

1042年 - ハーデクヌーズ王の埋葬
1172年 - 若ヘンリーとマルグリット・ド・フランスの戴冠式
1194年 - リチャード1世の2度目の戴冠式
1403年 - ヘンリー4世とジョーン・オブ・ナヴァールの結婚式
1554年 - メアリー1世とフェリペ・デ・アウストリア（のちのフェリペ2世）の結婚式
* 1817年 - 作家ジェーン・オースティンの葬儀と埋葬

その他

大聖堂は、作家ジェーン・オースティンが埋葬されている場所としても有名で、多くの観光客が訪れます。また、19世紀の作家アントニー・トロロープの作品にも登場しており、イギリス国内での知名度も高いです。2005年には、映画「ダ・ヴィンチ・コード」の撮影で、交差廊北側がバチカンの場面として使用されました。

ウィンチェスター大聖堂は、その壮大な建築美と豊かな歴史から、訪れる人々を魅了し続けています。

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